自分の書いたコード、自分の作ったプロダクトのどこに価値を見出せばいいのかいまだにわからずにいる。
学生時代は簡単なアプリケーションを作ったり、フロントエンドを好んで勉強していたから、就職して初めて携わることになったサーバサイドの開発ではこれまでの画面のような目に見える成果物がないことに戸惑った。処理が進むたびに書き込まれる膨大なログとDBに永続化されたレコードたち、確かなものはそのくらいで、自分が作ったものがここにあるというイメージは全く沸かなかった。
プロダクトを利用してくれるユーザは違う会社のその先にいる遠くの誰か、あるいはいるのかどうかもわからない程度の売れ行き、賞賛どころか不満の声すらこちらには届かない。業務システムだからこんなものを作っているのだとドヤ顔して友人に見せびらかすこともできない。案件を経験するたびにタスクをこなせる量が増えたり、人に聞かなくてもある程度自力で設計してコードを書けるようになったり、そういう実感は多少なりともあるのだけれど、それだって自分から見た自分の評価でしかない。良い設計ができてバグのない実装ができたところで給料が上がるわけでもなく、お客様から褒められることもない。あるとしても同僚や先輩たちからこいつは多少コードが書ける人間なのだと、見切りをつけられない程度のこと。綺麗なコードを書いても年功序列の弊社では給料は上がらないし、数字で示すことができないものにお偉方は報酬をよこさない。
うちのプロダクトは特別大きな負荷がかかる処理でなければさして性能は重視されないし、設計もコードも明らかにまずい作りをしていなければレビューは通る。自分のコードは最低限リリースできる程度の品質であることはマージされればわかるけれど、さてこれは良いのか、それとも悪いのか。自分では判断がつかない。あるいはもっと良い作り方があるのか。答え合わせの機会がないまま淡々とリリース日だけが迫ってくる。いつのまにか新しい案件が下りてきていて、日々はめまぐるしく過ぎていく。
また今日も、いかにも売れなさそうなサービスがひとつリリースされた。自分なりに綺麗に設計できたAPIだけれども、APIの設計が綺麗だからってユーザから褒められるわけでもないし、作ってる人間からしても売れなさそうなだと思うだけあって、そもそもの話、このAPIが実行される予定は未定。
最近、自分が初めて開発に携わったサービスのことを思い出す。リリースから1年、いまだにユーザがつかないまま、初めての申込APIが呼び出される日を待ち続けている。