2012-03-28

電子書籍について -- 一万冊を支えるために

電子書籍議論が華々しいけど、どうしても僕は納得がいかない。なので、一度某所に名前付きで書いたものを、少しでも騒ぎになってくれる事を願って、編集してここに掲載する。僕が誰かわかった人は、黙ってくれるとありがたい。

まず、今の電子書籍に対する不満は、そもそも今の電子書籍環境じゃ、生涯付き合えないということ。iBooks程度のインターフェイスだって100冊もあれば面倒な事が多い。検索機能も無い、それ以外のツールはもっと酷い。生涯付き合うなら一万冊の管理をこなせるようになってほしい。一万冊というのは、読書家の一生を考えれば、決して無謀な数字じゃない。数代続く学者一家ならそれくらい書庫にあったりしてもおかしくないし、図書館で借りたりすれば、10から60歳までで一万というのはあり得る数字マンガを買い込めば、普通の人でも数千冊は読破可能。

一万冊の読書を支えるためには、以下の機能が必要と考える。

これくらいでも、一万冊と付き合うのは難しいだろうけど、ひとつひとつ機能は決して難しいとは思わない。

また、書籍自身も単なる複製で終わってしまっているので、これも不満。例えばこんな機能があってもいいはずだ。

要するに、紙だと必然的に対処せざるを得ないものを排除して、今まで頭を使ってこなしていた事を電子側でこなしてほしいのだ。

特に歴史物だと、今自分が読んでいる箇所がどこの場所で、いつの年代かがわからなくなる。紙の場合は、巻頭または巻末に資料があるけど、電子であれば、読んでいる場所からその場で呼び出せるようになってほしい。もし小説ネタバレをするようなら、進行状況に合わせて内容を変化させれば良い(既出地名だけを表示する、など)。

こうした機能ゲームならおなじみで、主人公の位置をマップで示したり、あらすじが進行中に挟まって後から確認すると言った事が出来るけど、今の電子書籍は全くそういうことを学んでいない。これじゃ、値段を下げるくらいしか売り方が無い。こうした機能がつけば、同額か、値段を上げたって問題ないと思うくらい。元々文庫マンガは安いので、これ以上値段を下げる議論なんてしていたら、業界自体が死んでしまう。付加価値で勝負してくれた方がよっぽど良い。

たまに「やっぱり紙の方が良い」という議論があるけど、決してそんな事無い。引っ越しダンボールの中に蔵書がまぎれたり、本棚を二重に組んで取り出せないとか、紙の不便さは山のようにある。問題は、それを電子書籍が解決していない事だ。イノベーションでも、顧客需要でもなく、惰性で電子書籍に取り組んでいるからいけないのだけど。読書家の皆さんは、もっと声を大にして「紙は不便」と言おう。

  • そのくらいのことは誰でも考えつくから騒ぎにならないんじゃないの? http://www.dotbook.jp/magazine-k/2011/10/17/kindle_kills_bookishness/

    • 自分だってそこまですごい事を言っているつもりは無いけど、既に議論があるのに電子書籍環境が一向に良くならないとしたら、それは絶望的なんだと思う。

      • 膨大なメタデータを準備して、添付して、っていうだけでも、かなりのコストがかかるよね。 まあ大半をプログラムで処理するにしても、そのプログラムの開発にもコストがかかるわけ...

        • そうは言うけど、刊行点数の少ない今じゃないと、出来ない作業だよ。ツールをどこが作るかによるけど、PDF管理系のツールとか、どんどん先行事例を作って影響を与えてほしい。 費用...

          • ツールはたぶんAmazon・Google・Appleが作るんだろうね。 さっき貼ったURLはまさにAmazonのそういう取り組みについての記事だった。 Googleはもう何年も前からリアル書籍をデジタル化し続けて...

  • 一方で「自分が電子書籍を買うのは、それが安いからだ。ブックオフよりも安く買えるから電子書籍を買うのだ」って人もいるよ。 「書籍(CD)の単なるスキャン(ripping)で結構だから、安...

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