2010-04-16

司法修習生の給費の復活よりまずロースクールの学費の検証

http://mainichi.jp/select/wadai/news/20100416ddm041040007000c.html

司法修習生に対する給費制度の廃止に対して,日弁連が対策本部を設置したというニュース

これの解説を試みるのと同時に,問題提起をしてみたい。

最初に,司法修習生と給費制度について簡単におさらいしておこう。

司法修習生というのは,司法試験合格した後,研修中の者である

現在では)約1年の修習期間を経て,研修所を出所後,裁判官検事弁護士になる。

今までは,司法修習生には給費制度存在し,月々20万円ほどの俸給を国から受けていた。

その分,修習生は修習専念義務を負い,バイトするなどもってのほかであり,海外旅行に行くのにすら届け出が必要である

来年度の修習生からは,修習専念義務を負ったままこの給費制度が廃止され,同等の額を国が貸与する制度に代わる(もっとも,裁判官検事任官者は返還を免除される)。

その背景にあるのは,財政難である

法曹増員により司法修習生が増えた。現在では年に2300人程度の修習生として採用される(新司法試験組と旧司法試験組の合計)。

そして,一人当たりに修習の1年間で300万円もらえるとすれば,単純計算でも修習生の給費の総額は70億円となるのである

現行の制度では,法曹への道は,法科大学院を出て新司法試験合格して司法修習生になる,という道がスタンダードである

法科大学院の学費は高く,よほど裕福な子女でもなければ,奨学金や学費ローンでやりくりしてようやく法科大学院の学費を捻出する。

バイトをしようにも,新司法試験合格率は20%台であり,気を抜けば合格が危ぶまれる。

その上で,司法修習生になっても貸与制度となるならば,弁護士として世に出る頃には,多重債務者状態に陥ってしまう。

そのような弁護士が世にあふれ,借金返済のために事件漁りをし出す。そのような状況で国民権利義務が守られるのか。

それが日弁連の主張である

私も先日弁護士になったばかりの者として,日弁連の考えには基本的には賛同する。

しかし,昨今の国民の目は厳しい。「弁護士既得権益を守るために必死」という世論が形成されつつある。

日弁連の懸念が,70億円に代えても大事なことであると,どれだけ国民に伝わるか,どのように伝えるか,それが問われている。

もっとも,私は,給費制度の復活を望むよりも先に,あるいは同時にやるべきことがあるだろうと考える。

それは,「法科大学院の学費の低廉化」である

法科大学院の学費が低廉であれば,そもそもそこまで多額の借金を背負わず司法試験受験でき,日弁連の懸念も少し緩和されるだろう。

しかし,このことについて事業仕分けをしようとする人を寡聞にして知らない。

法科大学院法務研究科)の学費については,http://laws.shikakuseek.com/expenses.htmlサイトに詳しい。

国立入学金と併せて100万円前後,私立では学費は150万円前後のところが多く,入学金と併せて200万円を超えるものもある。

これに対して,研究者学者養成する機関である法学研究科の学費は,たとえば私立の明治大学でも年間50万円程度であるhttp://www.meiji.ac.jp/suito/nofu4.html)。

この差はどこから来るのだろうか。誰が得をしているのか。

法科大学院としての収支を公表しているデータがなかったので確実なことはいえない。

すぐに思いつくものとしては,新校舎の建築費用や,実務家教員弁護士等が教授に就任する)の報酬等であろうか。

ここで,仮に,実務家教員報酬によって,学費が高止まりしているというのならば,一気に日弁連の主張は説得力を失う。

弁護士自身が,新人弁護士に過大な借金を負わせる一端を担ってしまうことになるからだ。

日弁連は,法科大学院の学費が高いことについても検証すべきだ。

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