今日もいつもの精神科に訪れたのだが、待合室に中年の女性と二十歳前後の女性が座っていた。どうやら親子らしい。
「じゃあこの用紙に必要事項をここまで書いてくださいね。ちなみに娘さんはどのような症状ですか?」
いやここで聞くの!?プライバシーの問題は?と思ったが、母親が
「いや…色々あるんですが、一番はよく手を洗うようになったこと。何度も手を洗うので周りから見てても辛くなってきて…」
と答えた。ああ、強迫神経症、潔癖症の類かな。大変だなぁと思ってチラッと母親の方を見た。
すると、母親の手に透明のビニール袋がはめられていてビックリした。
「(いや、お前が潔癖症やん!)」
と心の中でつっこんでしまった。いやぁこれ娘が悪いのではなく、母親から病気の症状が伝わってるだけでは?
娘さん、悪くないのでは…。母親も自分が病気なの分かってるならまだいいが、「娘が手を洗うのが気になる」って言ってたし自覚ないのかも。それならこりゃ娘さんは地獄だな…
そう思っていたら、突然母親が
「ここの先生、どんな方ですか?」
とこちらに尋ねてきた。えっこの流れで話しかける?受付の人は窓口に戻ったけど、聞こえる範囲にいる。変なことは言えない。
「え、いい先生ですよ。優しいし」
まあ嘘はついていない。すると母親が
娘を思っての話しかけなら、まあ理解できるか。でも普通は待合室で聞かないよな、と思ってると
「長いんですか、ここ通って」「治ってきましたか?」
と他にも質問をしてきた。うーん、やっぱりなんかこの方、距離感がおかしい気がする。
娘には「もう書けた?あっここまで書かなくていいのに!お前はもうなんで…」ともぼやいたりしてるし、母親にやはり問題があるのではと思わざるを得なかった。
でも病院に来ても、母親が病気だとは先生も言わないだろうし、娘は母親から逃げられないし、病気は治らないんだろうな…と思うとすごく悲しくなってしまった。
とここまでで話は終わり。あとは蛇足。
自分も前、妻に「あなたのお母さんってちょっと変わってる。なんか子供を愛してない感じがする」って言われたことがある。
「え、そんなことないと思うけど」と答えたが、「子供がこんなに困ってるのに放ってたりするし、うちのお母さんだったらもっと助けてくれる。なんか他人行儀だよ」と言われた。
そういう親子関係って、周りから見ないと分からないものなのかもしれない。
自分も病気になってしまっているが、もしかしたら親の影響もあるのかもな。もしそうなら、あまり自分のせいにし過ぎるのも良くないな。そう思った。