主に描かれるのは、原作のクライマックス山王工業戦。宮原氏は「漫画を組み立て直し、この場面ではどこに誰がいるかを解析していきました。コート上の配置を描いたA3の書類が2センチくらいの分厚い山のようにあります。それを基にモーションキャプチャーを収録していきました」と説明する。
モーションキャプチャーの撮影では、実際に10人のキャストが40分の試合を再現。360度、50台以上のカメラを設置し、集まったデータを3DCGのアニメへと落とし込んでいく。
現場では「井上監督の圧倒的な熱量」がスタッフに伝播した。「まだ上があると思います」が口癖。眉毛1本を消すなどの繊細な修正が繰り返された。
宮原氏は「1カット1カットすべて確認していく。的確な修正がくるので、それに応えたいと、みんながアニメーター魂で合わせていった。普通のアニメ監督でもやらないだろうなってくらいの作業を原作者の監督がやっている。頭の先からしっぽの先まで原作者の絵。私は30年以上やっていて、初めての経験でした」と証言。約2700カットすべてに生みの親の情熱が込められている。
本格的なアニメーション作業が始まったのは2018年。制作の過程で、すでにカリスマ的な画力を誇る井上監督自身も「進化」していった。宮原氏は「2~3年間、作っていく中で監督の絵も変わっていきました。そこを拾わない手はない。絵を描く方が監督をされているからこそだと思います」と併走。96年に完結した当時のままではなく、現在進行形のスラムダンクに魂が宿り“懐かしい、でも、新しい”というワンダーを生んだ。
「原作主義」を徹底し、井上監督による「圧倒的熱量」がチームで共有され、監督自身も制作しながら「進化」していく。“3Pシュート”が観客の心のネットを揺らし、大きなムーブメントへとつながった。