ちょくちょくキスをしていた。
なんでキスをするようになったのかは
よく覚えてないんだけど
スキンシップの延長だったと思う。
小川くんは男なのにやたらと
手をつなぎたがる癖のあるやつだったんだけど
そういった癖もなんとなく
一度手をつないできたときに
うっかりと拒否しなかったら
そのあとも手を絡めてくるようになって
それを払いのけたら小川くんは
みんなで話をしていると、
僕は小川くんが納得するまでされるがままにされていた。
なんでキスなんてするようになったのか本当によく覚えていない。
僕が自身のことを信用できないことの根拠にもなっているのだけれど
とにかくどういう経緯で小川くんとキスするようになったのかはよく覚えていない。
廊下に誰もいなければ僕の手に手を絡めてくるし
これが基本パターンだ。
場所がトイレだったり学食への渡り廊下だったり特別教室だったり
体育館だったりするけれど
やってることは同じ。
ただそれだけだ。
小川くんに自宅で遊ぼうと誘われた。
僕が好きだったアニメを一緒に見ようとかなんとか言われたんだと思う。
そのとき僕は断った。
だから断った。
でもそれほど重大な決意をして断ったわけではない。
ちょっとその日は都合が悪いんだ、とそんな軽い感じで断ったのだ。
でも小川くんはそんなふうには受け取らなかった。
そしてその判断は間違っていなかったのかもしれない。
自覚はなかったけれど小川くんとのことはもう限界に近づいていたのだと思う。
僕の答えを聞いたときの小川くんの表情は忘れることが出来ないすごく不自然な無表情だった。
そして、じっと僕の目を覗き込んできて僕の心を読み取っているようだった。
だけど僕は小川くんの目から小川くんの考えていることはわからなかった。
その出来事の後から小川くんは僕を見るときにはすごく無表情な顔をするようになった。
時折じっと僕の目を覗き込んでくることがあったけれど、
そんなとき僕は目をそらすようになった。
そして小川くんはキスをしてこなくなったし手をつないでくることもなくなった。
僕は正直いうと少しホッとして
まかせているうちに
学年が変わってクラスが変わって
小川くんがその後どうなったのか僕は知らない。
もっとねっとりした展開を期待したのに