「いまの若手に演技派がいない」
言っちゃ悪いが、大御所のデビュー作よりもよっぽど明らかに上手いのだ。
いや、本当に上手い。昔の声優のデビュー作を見ていると「よくこれでデビューできたなあ」と思うぐらいに棒読みだったりわざとらしかったりする。
その時代の演技のレベルそのものが低かったこともあるんだけれど、棒読みで、声に魅力がなく、今の水準でいえば演技自体ができてない声優がわんさかいた。
昔の、懐かしのアニメ特集とか見てみたらわかるよ。演技自体のレベルが圧倒的にわざとらしいし下手だもん。
だって、下手だもん。昔のアニメを見てると、演技が下手だなあと思う。耳が慣れてくるまでかなり根気が必要になる。
その頃の新人の演技を見てみると、よくこれでデビューしたなあと思う。
正直オーディションがあったのか疑うレベルで、今の水準からみると下手に聞こえる。
むしろ、今の声優業界は演技が高止まりしてるんだよね。演技が上手くてはまり役なのは当たり前って時代。
昔のアニメなんか見てると、違和感ありありで、「え? こんなに下手だった?」といつも驚く。叫び声、ふとしたしぐさにかかる演技、キメのセリフ。いまよりも明らかに下手だ。
こんなレベルの高い時代で、新人は過酷な競争に曝されてるのだが、昔の声優時代はもっと過酷だったかのようにまで言われるのを見ると、「いや、昔はそこまできつくなかったぞ」と思う。
漫画家はいまの新人は絵が自分のころより断然上手い」と素直に認めてるけれど、これはあらゆる業界において言えることだ。
昔は下手な中に上手い人がいたから目立ったが、今は「みんな上手いから、だれも上手さでは評価しない」という時代だ。
「昔は上手かった。いまは演技派がいない」とか半可通がえらそうに言ってるのを見ると反吐が出る。お前はまず今の基準で懐かしのアニメを見てこい。その下手さにひっくり返るぞ。
確かにここ数年、アニメ見てても「なんだこの棒読み声優」みたいなのにはとんと出会っていない気がする
黒澤明の『椿三十郎』に出ていた加山雄三に感じたものと同じ。 全く喋れてないなこの人、と若かりし加山雄三に思った。
アレは下手さが逆に三船敏郎を引き立ててたなあ。