冬になると鼻の粘膜がヤラれるんだよね。なんかオブラートの切れ端みたいな薄膜がポロポロと鼻から出てきて、鬱陶しいし見た目もよろしくないから外に出る前にティッシュを捻ったやつで鼻の穴をグリグリして一網打尽にするんだけど、夕方頃家に帰ってくるともう鼻の中がなんか突っ張ってるような感覚があって、翌朝にはまた同じことになる。
今年も二週間くらい前からそんな感じになってきて、ああ、冬が来たなと実感した。二月末とか三月上旬くらいになると花粉症のせいで水っぱなが出るようになって、春いっぱいはそれが続く。日常生活に支障が出るから服薬したり点鼻薬を使って鼻水を抑制するんだけど、薬を飲んだ時の喉の渇きとか、点鼻薬の甘苦い感じとか、それが春のイメージ。
花粉症の症状が落ち着いてくると楽になったなと安堵するのだけど、あっという間に梅雨がやってくる。梅雨時期は偏頭痛に頻繁に襲われるから仕事のペースが落ちるし、好きなことにも集中できない。この時期は閃輝暗点もよく見る。
梅雨が過ぎて暑くなってくると、両手の指の側面に汗疱が出てくる。じんわり痒く、つい触ってしまう。放っておくと数日で表皮がガサガサになって、また暫くすると同じ場所に汗疱ができて痛痒くなる。八月上旬くらいになるとそれが落ち着いてきて、ああ真夏なんだなと思う。
暑さの盛りが過ぎて多少過ごしやすくなってくると、一年で唯一目立った不快感のない時期が始まる。まだ薄着で良いし、食べ物も美味しいし、一年で唯一楽しみな季節が秋だ。ここぞとばかりにアチコチに出かけるので、毎年一回くらいは風邪をひく。
そして気付くと鼻の粘膜が乾燥し始めて、また冬がやってきたと思う。冬を乗り越えても次は花粉症が、それに耐えても偏頭痛、その次は汗疱まみれで手がボロボロになって、そのあとでやっと楽になるんだなと考えて、少し憂鬱な気持ちになる。
いつのまにか、四季のほとんどで大したことではない程度とはいえ、何かしら嫌な身体症状が出るようになった。そのうち秋は秋で何かなるんだろうなと薄ら感じていて、そうやって一つずつ大丈夫なことを失っていくのが老いなんだろうなと思う。
それを繰り返すうちに中年から老人になって、周囲の高齢者がそうであるようにただひたすら死を先延ばしにするためによく分からない健康法を試したりアチコチの病院にかかったりする様になるのかな。だとしたらあまり長生きしたくはないな。