「酒を飲んで逃げるしか無いんだ」
「お前の人生を好転させる方法があるとしたら過去に戻ることぐらいだが、どんな人生を手にした所でお前はそれに幸せを感じないんじゃないのか?」
そうなのだろうな。
俺はきっと高望みをしているんだ。
ただ、普通に生きている中で、皆が普通に生きていることに感謝しあえる人生を望んでいただけなんだ。
それなのにどうして、良くわからない減点をいつまでもネチネチと責め合って「完璧じゃないね」とケチを付け合うようなことをどこでもやり続けているんだろう。
「安易に完璧を目指すのは仕方ない。点数軸というものを一切用意しなくていいから楽なんだ」
まったくもってそのとおりだ。
自分もつい油断すると完璧を目指すのは、どれぐらいまでいったら及第点で、どれぐらいなら100点で、それを越えたらそっからは120点150点のボーナスステージなのだと決めればいいだけなのだ。
それが難しい。
その難しさから逃げて、ついつい目につく欠点をあげつらっては「完璧じゃないね。合計点はいくらか知らないけど、とりあえず100点ではないね」と言ってなんだか評価をつけた気になってしまうんだ。
「そうやって楽をすることを許せばいいのに、そこでも満点じゃないから駄目だとケチをつける。結局は楽をしようとして苦労しているのさ」
なるほど、そのとおりだ。
どうやら俺にも考える頭はあるらしいが、それは脳みそ全体の1割程度らしい。
そして9割の考えなしな部分が暴走して、結果として自分で自分を不幸にしているんだ。
それを何とか抑えて人並みに見せているだけで上等なのに、それを評価する勇気がない。
タイプライターを叩く猿と大差は無いくせに、シェイクスピアを書きあげられないことに嘆き続けている。
「一見するよりこの世界はずっとカオスなんだ。それがここまでまともになっていることが奇跡なのに。それを認められないのはお前に評価軸がないからだよ」
そうなんだろうな。
「別に難しく考えなくていい。自分の潜在能力は自分の妄想の半分ぐらいだってことに気づくだけでいい。そして今自分は十分ソレを発揮できていると認めるだけだ」
それをした瞬間に、自分の目指していた自分に届く確率の低さを直視することになる。
「それなら、お前にとってそうして夢を見れているということが、随分と人生に夢を溢れ冴えてくれて大層幸せだと言い張ればいいのさ。酔生夢死の何が悪い」
なるほど、なるほど、なるほど。