創作に対しての根本的な思考法として、特に過去の作品に言及するとき、「現代、現実で提議された問題意識に準じて作品を批評、分析する行為はあまり実にならない」ことを考えるべきだとは思う。もちろん、ジャイ子との結婚を嘆く下り云々に疑問を持つ気持ちも分かるが、そのような観点から作品を見ても面白いのか面白くないのか分からなくなってくるだろうし、以前ネットで見た少年漫画誌に於けるジェンダー議論のように、単純な条理を取り込んで作品に仕立て上げた描写や観念を一つの批判基準によって統括しようという不毛な「物語狩り」が横行することになってしまうとおもう。それに、発信している本人からすれば心外だと思うだろうけれども、作品自体の価値を貶めると反発してくる過激な層がいないでもないだろう。
ただ一つだけ首肯できるのは、やっぱりジャイ子と結婚すると知って泣くのび太もなかなか酷いということだ。それでも多分、自分が同じ身の上だったら同じような行動を取るし、多分結婚への無根拠な希望もあって、未来を変えるという言葉にやすやすとのっかるだろうと思う。でもそんな価値観で見るより、素直に見たほうが面白いですよ。