喪った過去の憧憬を追い求めているのだと気付いた時、滂沱の涙が流れた。
我が家には常に不和があり、結果的に崩壊を迎えてしまったが紛れもなくそれは家族団欒の象徴だったのだ。
私が犬にした事は覚えているのに、弟が犬にしていた事といえば全く思い出せない。岬の宿を借りて犬も泊まった事。そこには父親の姿がまだあった。
今はといえば、父に対して母が嫌悪の感情を抱いたままギスギスした関係が続いている。
私は無意識に圧し殺していたのかも知れない。またあの頃に帰りたいという気持ちを。
結婚し家を出た身なので実家には帰れないと思い込んでいる。それがストレスとなって悪夢を見ざるを得なくさせていたのかも知れない。
創作活動では、ずっと成人指定の作品ばかり扱って来た。その方が閲覧者は増えた。そのCPは攻が過去、別の人物と深い関係を持っていたのでそちらが公式とばかり思っていた。
でも私は弟と愛犬を重ねられるあのCPの方に夢を抱いてしまった。「ずっと一緒にいて欲しい」と最後まで二人に言わせる事が敵わなかった。それは、他ならぬ私の願いだったに違いない。似たような光景を目にした時、作品に昇華する以外方法が存在しなかったのだ。だから私の作品の根底にある物は死であり別れである。しかしそれを口に出す事は憚られた。読者には作品を通じ何か満たされた気分になって欲しかった。
あれから同じ犬種の犬を飼った。今生きている犬に愛情を注ごう。
二次創作は不調だが、愛する気持ちは失わずにいよう。理想を追い求め過ぎるのもよくないがこれだけ傾倒しているのだから何かしらの意味はあるはずだ。作品を公開する事で、繋がれた縁もあった。多くの作品群が自分を勇気づけてくれる。イベントで会話するような深い関係性は期待しなかった。それでも救われているのだから私は感謝を述べるべきだ。