彼女はよく喋る子だった。兄弟がいっぱい居て、あずきが好きで、夏コミに行きたい、誕生日付近には親友と旅行に行ってきたと言っていた。
後にその親友とは喧嘩別れしたらしく、愚痴を聞かされた。最初は些細な事だったなずなのに、相手が謝ってくれないから謝れない、いつもこっちから謝って下手に出てるからつけあがるし、疲れた。10年後も20年後もずっと友達だと思ってたのに。
以前の職場でセクハラを受けていたことも愚痴っていた。母親の精神が不安定なこと。義理の父親が働かないこと。たまに暴力を振るってくること。彼女と姉が働いて得たお金が生活費だと言うこと。母方の祖父母の金遣いが荒く、パチスロで溶かしては金の無心をしてくること。同年代の女の子が彼氏や学校や親のことで愚痴ってるのを見てると、そんな家庭に生まれたかったこと。
たまに思い出したように「ひとり暮らしをするのが夢」だと、定期的に言っていた。彼女が大好きなアニメを見ながら闇鍋をしよう、と。
義父の暴力に関して、警察から勧告があったのだと、人づてに聞いた。義父から逃げるために仕事を辞めたのだと。彼女はどこかへ行ってしまった。
私には話を聞くくらいしか出来なかったから。なんか、彼女が居た実感がない。
出来の悪い妹みたいに思ってたのに。
何も出来なくてごめん。
寂しいなぁ。旅行行こうって言ってたのに、きっともう二度と会うことはない。