しれっと21世紀でも生き残っているが、もともとは『詩経』に出典がある。
今俗人嚏云人道我、此古之遺語也。
嚏がくしゃみ。今俗諺に、ある人がくしゃみをしたら、「誰かが自分のこと噂してるな」という。
これはとんでもねー話で、そもそも『詩経』は成立段階も分からず、周(紀元前1046年ころ~紀元前246年)の時代に成立したともいわれる。
東アジアでもっとも古いテキストの一である『詩経』に、古い言い伝えだ、と書かれてる。
そんなのが21世紀もいまだに俗諺として生きている。
もしかしたら卑弥呼(紀元239年に魏に遣使、周の時代が去って約500年)だってくしゃみして
「てめー難升米、私のこと噂しただろッッ!」
とか言っていたかもしれないのだ。
万葉集の時代には、くしゃみで噂、は確実に日本に知られていた。
眉根掻き 鼻ひ紐解け 待てりやも
返歌
今日なれば 鼻ひ鼻ひし 眉痒み
思ひしことは 君にしありけり(巻11-2809)
「鼻ひ」がくしゃみ。くしゃみをするというのは、相手に想われている、という俗信があった。
眉を掻いたり紐が解けたりってのも、相手に想われたり、相手に会えるという予兆なのだそうだ。
ここでは、相手の女の子が眉を掻いたりくしゃみしたり、紐が解けているんだろうな。そんで私がいつ来るか来るかと待ってるんだろうな。
なんか今日はくしゃみはでるし眉はかゆいしで、あなたが想っていたからこんなことになっていたんですね。
ということで万葉集の時代には、ほぼ確実にくしゃみで噂は日本に来ていた。
で、21世紀の私たちもなんとなくこれを受け継いでいる。これってかなりすごいことだと思う。
最後になるけど、『詩経』に載る情報がなんらかの手段で日本にもたらされてから、連綿とこの俗諺が息づいてきたか、はわからない。
今はくしゃみで噂、は多くの人が知っているけれど、たとえば、江戸時代のある時期はそうじゃなかったかもしれない。あるいは、足利尊氏はしらなかったかもしれない。
『詩経』のテキストはずっと古典としてあるから、くしゃみで噂、は一旦絶えても、古典を読む人がいる限り復活する可能性がある。
だから、連綿と、卑弥呼の時代からずっと私たちがくしゃみで噂を知っていたかは疑問だ。
これと関連して、私たちはくしゃみで噂、をあるていどみんな知っているけど、なぜこうなったのか。これは調べなくてはならない。
なにかみんなが見るような教科書や雑誌や、あるいはテレビドラマやコメディがあって、それでみんな知るにいたったのだろう。
マンガやアニメで便利に使われてるけど リアルでは使わないなあ
水素水飲めよ
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