「や、やっと信じてくれた……じゃあ本題だけど」
「でも、お前の話を全面的に信じるかはまた別の話だろう」
「えぇ……」
「未来から来たことが事実であっても、そいつの語ること全てが事実な保障なんて何一つない。現状確定しているのはお前が未来人だという点のみだ。お前の言うことが本当かどうかは、その都度判断するに決まってるだろ」
「のび太なら信じるよ」
「現実とフィクションを混同するんじゃない。あと、そいつを基準にするのもやめてくれないか」
「……」
「お前が未来人だと確定しても、お前の話を信じない理由はいくらでもあるぞ。例えば、同じ時代からきた人間が2人いたとして、そいつらのする未来の話が食い違っていたら俺はどちらを信じればいい? 未来から来たこと自体は事実でも、そいつらがする他の話まで事実である保障なんてどこにあるんだ?」
「それは……信じてもらうしか」
「話が振り出しに戻ったな。だから『信じさせてみろ』って、さっきから何度も言ってるんだが」
俺が頑なにも見えるかもしれないが、考えてもみてくれ。
こいつが未来人だろうがなかろうが、不審人物である事実は揺らがない。
なんで、そんな奴の話を鵜呑みにしなければならないのだ。
「後さ、いきなり押しかけたことに対して何か言うべきことがあるだろ。更に庭までこんなにしやがって。礼節やコンプライアンスをわきまえろ。お前のいた未来ではそういったものがなくなっているのか? 仮になくなっていたとしても、信頼を得たければ郷に入っては郷に従うものだろう」
すると突然、声を張り上げながら退散した。
「もういい! そっちに信じる気がないなら、いくら話をしたって無駄だ! あんたに未来を託したボクが愚かだったのだ!」
俺も些か頑なであったかもしれないが、仕方が無い。
彼女は実は本当に未来人かもしれないし、そして言っていることも全て本当だったかもしれない。
その可能性が全くない、と断言するつもりはない。
つまり“信じるかどうか”ということだ。
信じるかどうかは俺の問題だ。
だが信じさせたいならば、それは彼女がどうにかすべき問題なのだ。
彼女は信頼を勝ち取るような人格者ではなかったし、何より説得力がなかった。
まあ、もしも俺が未来人だとして、彼女のような使命があるとしよう。
だったら、少なくともエイプリルフールの日にタイムスリップすることだけは避けようとするだろうな。
ましてや“信じない理由”があるのなら尚更な。
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