2016-12-06

[] #8-5「おにぎりの具」

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事態収束し、弟たちと合流する。

シロクロはあのままどこかに行ってしまったようだが、それを気に留める者はいない。

改めて捕まえた店員を皆で観察する。

意外にも制服を着こなした何の変哲も無い店員だった。

まり記憶には残っていないが、恐らく以前よりあそこで働いていた店員だと思う。

「私、超能力者だけど、この人も超能力者のようね。性質は違うようだけれど」

タオナケは店員の頭に手を当てると、そう語った。

ああすると超能力者同士なら分かるらしい。

そうか、おにぎりが消えて客のカゴに入っていたのは、超能力アポートだったのか。

「どうしておにぎり昆布を入れたんだ」

「試したかったんだよ、自分超能力を」

「私、超能力者だけど、力を持つものが陥りがちなことね」

まるで達観したようなことを言ったので俺たちはタオナケに視線を向けるが、発言者本人もしっくりこなかったようで目を逸らした。


「それにしても、予想以上の展開だったな。まさかおにぎり昆布需要の謎が、一人の超能力者によって長年操作されていたとは」

「いや、俺が超能力に目覚めたのはつい数ヶ月前のことだぞ」

「え?」

全員が固まる。

アポートも試し試しで、おにぎりを移動させたのも今回が初めてだし」

「じゃあ何であんなに必死に逃げたんだよ」

「いや、悪の超能力機関とかがあって、実験台にするために狙ってきたのかなあ、と」

そんなのあるわけないだろう。

超能力があるからといって、超能力者機関があるとまで考えるとは、フィクションに触れすぎである

俺たちは脱力して、疲れが今になって出てきたのか、その場にへたり込んでしまった。

ちょっと待てよ、結局おにぎり昆布の謎が解明できていないんだが」

「あ~? そりゃあ、オメエ。昆布日本で昔からしまれている食材からじゃねえの。同じ具ばっかりじゃ何だか次点として選ばれやすいけど、そこまで好きじゃないから残されやすい、とか」

店員のそれっぽい答えに否定肯定もする気が起きないほど、俺たちは徒労感にやられていた。

かくして、おにぎりの具問題は俺たちの息切れによって幕切れとなった。

(#8-おわり)
記事への反応 -
  • 事情を把握できていない俺たちはというと、外から様子を見ているだけだった。 すると、店員が突如飛び出してきたのだから驚きである。 続いて弟が店を出てくると、開口一番叫ぶ。 ...

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