俺たちは近くの店に向かった。
ドコゾ系列のスーパーということもあり、とりあえずここを調べれば他も大体同じである。
「誰が調べにいく?」
「マスダの兄さんは先ほど調べにいったから、また行くのは不自然だ。それ以外がいい」
「じゃあ、ミミセンがいくか?」
「僕は耳栓をつけていないと思考が働かないのは知ってるだろ。色々と精彩を欠く」
そう答えるミミセンの声は、自分で思っているよりも小さい。
シロクロは“アレ”だし、タオナケは超能力が暴発したら大事なので、弟が調べに行くことにした。
俺たちは堪え性の無いシロクロを押さえ込みつつ、離れた場所から見守る。
弟の動きは妙にぎこちなく、まるで「別の何か」を警戒しているようだった。
おにぎりの陳列コーナーに向かうかと思いきや、その隣の棚に向かう。
そうして数分後、弟の動揺が見て取れるほど身じろぐ。
後から弟に聞いたのだが、このとき棚のおにぎり昆布がひとつ消えたらしい。
消えた昆布の在り処を探そうとしたとき、レジに向かう客のカゴに目が移った。
その客がとったおにぎりは鮭であって、昆布は手にとっていないはずなのに、なぜかカゴに入っていたのだ。
驚いた弟はその客のもとへ向かいそうになったが、すぐに思いとどまり今回の昆布の謎を思い出していた。
あの客を追うのはミスリード、本当に追うべきは「あのカゴに昆布のおにぎりを入れた奴」なのだ。
弟は辺りを見回す。
手段は分からないが、それでもそいつを探すことは不可能ではない。
もし、何らかの手段でカゴに昆布のおにぎりを入れた奴がいるなら、それがレジを滞りなく通過して、その客も「あれ?……まあ、いっか」となる場面を見届けたいはずだ。
それを眺めている奴がいる可能性が高い。
……いない!?
アテが外れたのか……いや、そうではない。
いたのだ、近くに一人。
走るような速さの弟は、常に足のどちらかは地面に接していた。
「……ということなんだ」 「あまり気にしたことはなかったけど、確かに不思議だ。あいつら昆布はいつも何食わぬ顔でそこに佇んでいる」 「何かあるわね」 「オーマイコンブ!」 ...
おにぎりの具は何が好きだろうか。 俺は梅で、弟のマスダはツナマヨだ。 兄弟だからって、好みが同じってわけではないさ。 俺たち兄弟に限ったことではなく、好みというものは千...
≪ 前 事態を把握できていない俺たちはというと、外から様子を見ているだけだった。 すると、店員が突如飛び出してきたのだから驚きである。 続いて弟が店を出てくると、開口一番...
≪ 前 事態は収束し、弟たちと合流する。 シロクロはあのままどこかに行ってしまったようだが、それを気に留める者はいない。 改めて捕まえた店員を皆で観察する。 意外にも制服...