2016-12-02

[] #8-1「おにぎりの具」

おにぎりの具は何が好きだろうか。

俺は梅で、弟のマスダはツナマヨだ。

兄弟からって、好みが同じってわけではないさ。

俺たち兄弟に限ったことではなく、好みというもの千差万別だが、ちょっと特殊立ち位置のもの存在する。

例えば、俺たちの間では昆布がそれだ。

需要はあるからそこにいるはずのに、なぜか結局は最後まで残るんだ。


とある休日、俺は後先を考えずに昼ごろ寝て、夕方に起きた。

休日からこそ堪能出来る生活だ。

食卓に行くと、大き目のタッパーに妙に偏った配置でおにぎりが並んでいた。

どうやら母が、ママ友の集まりピクニックか何かに行っていたのだろう。

まり、このタッパーの中のおにぎりは残り物だということだ。

どうせ、こういうものは持ち帰っても、後で捨てられるんだよなあ。

小腹が空いていた俺は、どうせ捨てられるならとおにぎりに手を伸ばした。

「はは、やっぱり昆布だ」

いずれにしろ、今のこの場において昆布という存在は、確実に俺の腹を満たしてくれる存在だ。

もちろん、梅があるならそっちを食べるけど。


それにしても、不思議だ。

これだけ敬遠されているのが分かっているにも関わらず、昆布という選択肢は残り続ける。

何となく疑問に感じて近くの店を行き来して軽く調べてみると、意外にも需要があることが分かった。

需要がある分、比例して残りやすくなるのかと納得したいところだが、俺はどこか違和感を拭い去れないでいた。

いくら需要があるといっても、それは他の具にだっていえること。

昆布だけ残り方が異質なんだ。

“何か”がある。

しか理由は分からない。

これ以上は一人で無理だと考えた俺は、弟たちの功績をアテにすることにした。

次 ≫
記事への反応 -

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん