おにぎりの具は何が好きだろうか。
俺は梅で、弟のマスダはツナマヨだ。
俺たち兄弟に限ったことではなく、好みというものは千差万別だが、ちょっと特殊な立ち位置のものも存在する。
例えば、俺たちの間では昆布がそれだ。
需要はあるからそこにいるはずのに、なぜか結局は最後まで残るんだ。
食卓に行くと、大き目のタッパーに妙に偏った配置でおにぎりが並んでいた。
どうやら母が、ママ友の集まりでピクニックか何かに行っていたのだろう。
どうせ、こういうものは持ち帰っても、後で捨てられるんだよなあ。
小腹が空いていた俺は、どうせ捨てられるならとおにぎりに手を伸ばした。
「はは、やっぱり昆布だ」
いずれにしろ、今のこの場において昆布という存在は、確実に俺の腹を満たしてくれる存在だ。
もちろん、梅があるならそっちを食べるけど。
それにしても、不思議だ。
これだけ敬遠されているのが分かっているにも関わらず、昆布という選択肢は残り続ける。
何となく疑問に感じて近くの店を行き来して軽く調べてみると、意外にも需要があることが分かった。
需要がある分、比例して残りやすくなるのかと納得したいところだが、俺はどこか違和感を拭い去れないでいた。
いくら需要があるといっても、それは他の具にだっていえること。
昆布だけ残り方が異質なんだ。
“何か”がある。
これ以上は一人で無理だと考えた俺は、弟たちの功績をアテにすることにした。
≪ 前 「……ということなんだ」 「あまり気にしたことはなかったけど、確かに不思議だ。あいつら昆布はいつも何食わぬ顔でそこに佇んでいる」 「何かあるわね」 「オーマイコン...
≪ 前 俺たちは近くの店に向かった。 ドコゾ系列のスーパーということもあり、とりあえずここを調べれば他も大体同じである。 「誰が調べにいく?」 「マスダの兄さんは先ほど調...
≪ 前 事態を把握できていない俺たちはというと、外から様子を見ているだけだった。 すると、店員が突如飛び出してきたのだから驚きである。 続いて弟が店を出てくると、開口一番...
≪ 前 事態は収束し、弟たちと合流する。 シロクロはあのままどこかに行ってしまったようだが、それを気に留める者はいない。 改めて捕まえた店員を皆で観察する。 意外にも制服...