2016-02-10

亡くなった祖父カバンにいれていたもの

先週、父方の祖父が亡くなった。

85歳、大往生だった。

父には男兄弟しかおらず、、

祖父にとって私は初孫で女だったものから

大層可愛がってもらったものだ。

写真を撮るのが趣味である祖父

合うたびに私の写真をとり、

私が小学生になるまでは生後○○日なんて、

しっかり数えて写真アルバムに書き込んでいたくらいだ。

中でも祖父お気に入りは、

誕生日写真を綺麗な台紙に張って飾っておくことだった。

1歳から20歳になるまでその写真撮影は行われたが、

なぜか20歳の成人式写真だけは台紙にも張らず、

リビングに飾ることもしなかった。

どうやらどこかに仕舞い込んでしまったらしい。

当初は気に入らなかったかな?なんて疑問に思ったが、

すぐにその疑問すら忘れていった。

祖父が亡くなったあと、

足の悪い祖母について、祖父事務整理に銀行に行ったときのことだ。

祖父担当をしてくれていた中年銀行員の方が、会うなり私に

「お孫さんですね、おじい様には大変お世話になりました」

なんて、話しかけてくるのだ。

どこかで会ったかな、なんて不思議に思ったが

必要な処理だけすませ次の銀行に行ったが、

そこでも担当の人は会ったこともない私に話しかけてくるのだ。

私は思い切って聴いてみた。

「あの、どこかでお会いしたことはありましたか?」

そこで私は成人式写真を飾っていなかった理由を知ったのだ。

80近くなった祖父は、

今後の財産分与の話をしに定期的に銀行へ行っていたのだが、

その話しの間に必ず私の自慢話をしたそうだ。

「毎回ね、おじい様は『たまたまカバンに入っていた』なんて言って写真を見せてくれたんですよ。嬉しそうにね、初孫がこんなに立派に育ったなんて言って。本当に嬉しそうに。だから私はあなたの顔を覚えてしまったんですよ。」

台紙に張ったものをわざわざ銀行の人に見せるなんてことは出来ない。

けど、たまたま書類を入れていたカバンに入っていたなら、ちょっと話してもかまわないだろう。

そう思っていたようだ。

孫の成長した姿の写真を、

いつも自分の側にあって、

人に自慢出来るようにするために、

祖父は私の成人式写真を台紙に張りリビングに飾らずにいたのだ。

祖母はなかばあきれたような、申し訳なさそうな顔をしていたが、

私は目頭が熱くなってしまった。

手続きをすませ祖母とわかれ、

帰りの電車の中で祖父のことを想った。

自分が二十歳まで育つとゆうことだけで、

祖父がそこまで喜んでいてくれたのか。

私にもいつか子どもができ、

孫ができるようになったら、

祖父と同じ気持ちになるんだろうな。

仕事は大変だし、

毎日楽しいわけではないけど、

そんな風なおばあちゃんになれるなら

今の日常も悪くないかな、

なんて思いながら家路についた。

夕焼けがとても綺麗な帰り道だった。

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