異性の幼なじみで、小さい頃は互いの家を行き来してよく遊んだものだ。
中学までは同じ学校に通っていて、同じ高校を志望していたけれど、私は受かり、彼は落ちた。
歩いて3分とかからない距離なのに、会話どころか会うことすらなかった。
大学に進学したにはしたけれど、途中で病気になり退学したことは聞いていた。
互いのことを人伝てに聞くのみの関係で、結婚したらしいということも、私は母経由で聞いたのだった。
別に何の感慨もなかった。日々ころころと流れていくばかりのニュースを聞くかのように。
ただ、気になっていることがある。
それは、遺伝性の病質を抱えているということだ。
彼の母はその病気が原因で若くして亡くなった。
病気の影響からか、彼は同年代の男性に比べて、きっと私よりも白く細い体つきをしている。
子どもも生まれたと聞いたけれど、そう滅多にできるものでもないらしい。
よく、よくも、子どもを作り、育てることになったものだと、その点においては感心した。
私は怖い。子どもを産むことが。
その影響か、母の姉妹の半数程度は自律神経失調症を患っており、従兄弟と、そして私の妹は統合失調症を発症し、障害者手帳の交付を受けている。
もしも、自分の子どもが病気になったら、それも自分の血筋を受け継いだために、と思うと恐ろしくて堪らない。
恋人と呼べる人はいないけれど、もしこの先結婚するようなことになっても、子どもは産めないと思う。
だけど自分が生きた証をどこかしらに留めておきたくて、細々と話を書いている。
ただ生きるだけは生きて、父母ともしかすると妹を見届けてから、誰にも迷惑を掛けないようにぽっくり逝くというのが理想だ。
我が身の血脈そのものを遺したいとは思えない、不幸が蔓延するかもしれないから。