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出版ではなく作家志望者を喰い物にして稼ごうという業界の魂胆が垣間見える本。
シナセンや芸術系専門学校やカルチャーセンターが細々とやってきた業界内ビジネスに、胴元が参戦してきた。
流行作家が雁首を揃え、文筆業の華やかな部分だけを語っている。
阿川佐和子、石田衣良、江國香織、角田光代、大沢在昌 etc.
本書の想定読者は"本を読んだことはないけど何となく作家になりたいと思っている人たち"だろう。
どんな有名作家の、誰でも知っていそうなことでもしっかり書かれている。
「こんな基本情報さえ読者は知らない」という前提で作られた本なのだ。
略歴紹介に続く本文では、"山本周五郎(しゅうごろう)賞"、"芥川(あくたがわ)賞"などとルビが振ってあったりする。酷い。
荻原浩は「公募ガイドを見て新人賞に応募した」だなんて言ってるし、森村誠一は「私の作品を読んだことがない、小説はあまり好きじゃないと言う担当編集に会って驚いた」と書いているから、本書の読者も相当ナメられているだろう。
道尾秀介(40歳)をして「失敗するのを恐れて、臆病な読者が映画化された本を買う」と言わしめるほどである。読者の質が低いのは業界周知の事実で、自然と商いのレベルも落ちているのだ。
念押しするかのように、あとがきでは北上次郎が「作品は斬新さが重要、完成度は求めていない、ストーリーはどうでもいい」と放言している。端から新人作家を使い捨てにする気でいて、作家を育てる余力が業界にないのだ。
ちなみに私は本著を図書館で借りて読んだ。
堂々たる複本所蔵であるが、予約を入れてから二ヶ月ほど待たされた。
それだけ"ニーズ"があるのだ。
江國香織の文体は参考にした時期があったので、わたしは悪く言う気にはなれないのだけれども。