企業の内部留保についての話題が、はてブでホッテントリに入った。
日本共産党が信じて疑わない「大企業の内部留保」というトンデモ埋蔵金理論について
しかし、これはトンデモとも言えるような、勘違いの理屈なので、指摘しておく。
どこがおかしいかというと、「ストックとフローの違いを理解できていない」ということだ。
ストックとは、手持ちの金の残高。
この両者は、別のものだ。ところが、上記の記事では、両者が混同されている。
「企業の内部留保をどうこうする」という形で、「内部留保を賃金に回す」というのは、ストックの話だ。しかし、ストックを賃金に回すというのは、暴論であり、理屈になっていない。それはタコが自分の足を食いつぶすようなものだ。仮に「ストックを賃金に回せ」という主張があるのならば、そのような主張は暴論であり、批判されるべきだろう。
しかしながら、この批判記事は、「藁人形論法」であるにすぎない。なぜなら、「ストックを賃金に回せ」というような主張は、誰も述べていないからだ。(そう誤解されやすい主張を共産党は述べているが、そこにこだわるべきではない。妙に揚げ足取りをする必要はない。)
肝心なのは「企業が内部留保を積み立てている」というのは、「ストックではなくてフローの問題だ」ということだ。
これは次のことと同義だ。
このことは、グラフでもすぐにわかる。たくさんのグラフがあるので、自分で見るといいだろう。
これを見ればわかるように、労働分配率は下がりっぱなしである。
これをモデル的に言えば、こう言える。
「1年目には月給が 20万円だったのに、2年目は 19万円、3年目は18万円、4年目は17万円、5年目は16万円というふうに下がり続ける」
で、賃金が減った分だけ、企業の取り分は増える。しかも、企業は、それを設備投資に回さないで、自分で貯め込んでいる。
ここでは、企業の内部留保が増えているが、内部留保が増えたこと(ストックが増えたこと)が問題なのではない。
「本来は労働者の分である金が、企業と労働者の配分比率の変更によって、企業の側にまわっている」
なぜなら、これは、一種の泥棒だからだ。(賃金泥棒。雇用者の強権によって賃金を強奪する。)
結局、「企業の内部留保が増えたことが問題だ」というのは、「企業のストックが増えたことが問題だ」ということではないし、「企業のストックを減らせ」ということでもない。
では何かというと、「労働者から企業へ」というフローが発生していることが問題なのだ。つまり、泥棒行為が発生していることが問題なのだ。(企業にとっては内部留保の拡大だが、労働者にとっては賃下げ。)
この問題を、ストックの問題として理解するのは、本質を見失っている。この問題はあくまで、フローの問題なのだ。そして、フローの量を認識するためには、労働分配率という数字に着目するべきなのだ。
そうそう。共産党も「内部留保○○円!」なんて絶対額で煽るんじゃなくて、増分をもとにきちんと議論してほしいんだよなあ。いやちゃんと赤旗の記事では説明してるのかもしれない...
「企業の労働分配率は、ここ数年、下がりっぱなしである」 このことは、グラフでもすぐにわかる。たくさんのグラフがあるので、自分で見るといいだろう。 どれを見てもここ数年...