個人的な経験で言うと、スキルは仕事の外で身につけるものであって、仕事はそれを(直接的又は間接的に)裏づける実績を出すところ、という感じ。
投資銀行屋がM&Aのノウハウを身につけるとかだと仕事を通してしか学べないかもしれないが、そういう仕事に就いてる奴は大抵「誰でもできる仕事だから」と言う。
これはおそらくそういう意味(ノウハウであってスキルではない)だと思う。
例えば俺は仕事で線形代数とかバリバリ使うんだけど、これは教えろと言われてもとても難しい。
教科書に書いてあることは教えられるけど、使いこなすにはそれじゃ全然足りなくて、学生時代から数えて10年以上、様々な状況で実際に使ったり失敗したり、より抽象的な理論(関数解析とか量子力学とか群論とか)を何度も勉強して開眼したり、やっぱり勘違いだったことが分かったり、無数の経験を通じて脳内のニューラルネットが構築されていい感じに枝刈りされた状態が今なわけだ。
こういうものは恐らく「スキル」と言っていいんじゃないかと思う。
そして、仕事だけではこういうプロセスを経ることは基本的にできないと思う。
ニューラルネットというのは極めて複雑な構造物で、ループバックがあったりフリップフロップみたいな記憶構造があったりで、straightforwardなシーケンス処理としては絶対に記述できない。対して「ノウハウ」というのは、それがどんなに複雑であっても、本質的にシーケンスとして記述できる処理の集まりのことを言うのかもしれない。
そうそう、ジャンプのマンガの「トリコ」に出てきた話で「プロは考えない」というのがある。
これはほんとにそういうところがあって、要するにニューラルネットが十分にtrainされているから、論理的に考えなくてもニューロンに情報をぶっこめば適切な答えが得られるということ。
俺程度でも、数式が書いてあるのを見ると意味を考えなくても何となく間違ってるのが分かったりする。よく考えないと何で間違ってるのかは分からないんだけど、何となく違和感があって間違ってるっぽいなと分かる。