2021-06-26

東京まで60分の町に生きて

そこはドラマ映画に出てくるような絵になる田舎ではない。

郷土という言葉がしっくり来るような名物も海も山もない。

色合いもバラバラ建物老朽化も激しい中規模の同じようなチェーン店が延々と並ぶバイパス道路を大型トラックが途切れる事なく走り、かつては農耕地工業地帯だった土地が虫食いに切り取られて似たような建売住宅が並んでいる。

虫食いの農地には駅から30分も離れているのに相続税対策からと建てられた同じような形のアパートも沢山ある。

決まってプロパンガスなのは都市ガスが通っていないからで、その隣には砂利の駐車場と小さな果樹園雑木林がある。

・最寄りのコンビニ(700m)

・最寄りのスーパー(1510m)

こんな表記のその手のアパートに入居しているのは外国から出稼ぎで来ている人が中心だ。

「何十年間家賃保証!」とかそんな言葉を信じて判をついた農家のおじいちゃん・おばあちゃんはとっくに天国へ行ってしまっている。

この町の建売住宅を終の住処とした年代団塊の世代が中心だ。

彼らの多くが遠い故郷を捨てて発展を続ける日本経済未来を信じて東京から60分のこの町に一生の買い物をした。

バブルの頃に出来たニュータウンの話になると、「あそこには大学先生大企業社長が住んでいる」「海外旅行に行くお金持ちが多い」そんな根も葉もない噂話が必ず流れている。

この町に6%や7%の金利で5000〜6000万の建売住宅を買ったサラリーマンたちが懐かしむ「俺たちだってそこそこイケてたんだぞ」という昔話し。

しかし彼らの子供たちの過半数はこの町で生きる事を選ばなかった。

人口減少率は4%を超え、億近くのお金を払って手に入れたボロボロ建売住宅も今となっては資産価値を持たない。

唯一の幸運は、年功序列で定年までたどりつく事が出来たという生まれ時代のものでありその恩恵年金で細々と食い繋ぐ事が出来る事。

ももうそれも団塊の世代がいなくなったらおしまい

もっと東京に近かったら、この町から子供達は去らなかったかもしれない。

もっと通勤不可能なくらいに東京から遠ければ、この町はとてもいい田舎の風情が残った誰かの故郷になったかもしれない。

東京から60分のこの町は、東京から60分である事以外に全てを失ってただ静かに衰退していく。

  • バブル期でも 東京から60分で3000万~4000万 又は東京から40分で5000〜6000万 だよ

  • 東京から40分だってクッソ寂れてるとこしってるぞ というか団塊ってマンションだの建売というものを初めて目にして買った世代だから手入れが絶望的にヘタ 団塊ジュニアがこれだれ...

  • あらためて見ると都市ガス(東京ガス)提供エリアって案外少ないね。 https://home.tokyo-gas.co.jp/gas/userguide/kyoukyuu_area.html 都市ガスがない、果樹園があって外国人労働者が多くて太いバイパ...

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