http://diamond.jp/articles/-/53748
記事は「みんなこの改革を理解してないで的外れに反対している」ってことなんだが、この改革や記事の人がまったく理解していない(あるいは意図的に無視している)ことがあって、それは「大半の人は生産性が低い」ってことだ。というか「生産性ってのは属人的だ」って話でもある。
外資も含めていろんな企業で働いたし見てきたけれど、ある仕事を遂行するにあたって、どのくらい仕事できるか、利益に貢献できるかってのは、非常に属人性が高い。いわゆる「仕事できるやつ」ってのは、本当に掛け値なしにできる。同僚の20倍できるやつってのは事実存在する。それは一握りだとしても、10人程度の部署であっても3倍4倍の生産性の違いがあるのはザラだ。それは経験がどうとか年齢がどうとか入社時期がどうだとかじゃなく、もう本当に属人としか言いようがない。人によるのだ。
それでも日本的な企業ってのは、おおよそ給料は横並びだ。できるやつは多少給料に色がついてるだけで、間違っても20倍ももらえない。せいぜい出世が早くなる程度だろう。それすらも企業の規模によってはない場合も多い。現場のエースを管理職に回したら現場が回らない、程度の理由でだ。
生産性が低い労働者ってのが、属人として生産性が低いわけだが、それでも会社に貢献できる(とされている)ことがあり、それが残業なのだ。日本の少なくない企業で、残業というのは業務を終わらせるためのものではなく、「わたしは会社に対して忠誠心高い社員です」というメッセージを、労働者が周囲に示すために行われている事実ってのが現実じゃなかろうか。続くメッセージは「わたしが、給与に対して割り当てられた該当業務において売上ノルマの売上を確保できなくても、給与はちゃんと下さい。なんといってもわたしはこんなにも忠誠心が高いのですから」ということであり、これが「日本の労働は生産性が低い」の光景だ。
「日本の労働文化は国際的に見て生産性が低い」「だから生産性の高い人に対しては報酬で報いるべきである」ってのは正しい。正論だ。でもこの話の本質ってのは「忠誠心とかなんとか奇妙な踏み絵じみたアピをする無能な奴は全部アレしちゃおうぜ」って話なのだ。アレってのはもちろんクビを切るなんて云う安易な話ではなくて、無理やり生産性を上げるってことだ。そのために(スパルタンに)管理するという話でもある。そしてそれはムチとして「残業代カット」を含むだろう。だって同じ給与のエースは、残業をつかわなくても2倍のノルマをこなしているのだから、同一成果同一賃金の法則に照らせば、生産性が低い労働者に対して残業代を払うのは不公平だ。
おそらく圧倒的多数の国民は無意識にせよこれに気がついている。
「労働時間の規制改革」に反対しているのは、べつに「本質が理解できてないから」ではなく「自分がいままで寄生していた」自覚があるからだ。「仕事ができなくても、上司の嫌味を聞きながしながら長時間デスクに座ってればお給料がもらえる既得権益」を守りたいだけなんだ。だからこれは戦略的に見て極めて正しい反対である。
もちろんそんなことをしてれば会社も国も傾くけどな。
現在の裁量労働制や管理監督者の時間規制除外が理念通りに動いていない以上新しい制度も画餅に過ぎないでしょう。 労働時間の延長は議論されても、早く仕事が終わったら自由に帰...