って、先月、専門学校時代に付き合ってた元彼女のお父さんからメールをもらった。
元彼女と別れてからは全く接点もなく、8年ぐらい連絡を取ってなかった。
何の因果か、お父さんとはちょいちょい仕事で付き合いがあって、そしてお父さんは娘と元カレ(僕)について何も言わず、仕事の付き合いとして呼んでくれた。
というのも、僕は4年前に結婚して、その祝電もくれていたのがその「お父さん」(電報は取引先として頂いた)なのであって。
お父さんは、豪快で、酒好きで、笑い上戸で、関西弁で楽しいことが大好きで。僕も大好きだった。
加えて日頃から大変お世話になっていることもあって僕も喜んで還暦パーティーに参加した。
当然、元彼女もパーティーに参加していて、8年ぶりに普通に挨拶だけ交わした。
僕は既婚者で向こうはまだ、未婚だった。
僕らの関係とエンディングについてお父さん(取引先)に詳しくは話していなかった。
お父さんから「お前、娘にふられた勢いで結婚したようやろうけど、結局娘が残っとるわ!誰かいいやつ紹介せえよ!わはははは!」って言われて豪快にまた、笑ってた。本当は彼女の浮気が原因で僕が一方的に別れを切り出した、なんて到底言えないまま、終盤のカラオケが始まった。
カラオケが終わって、パーティーがお開きになっても、僕は元彼女と会話することはなかった。
別れ際にその元彼女がすこし、切なそうな、しおれたバラを嗅いだような顔をしてたけど、気にしなかった。
気にしないように、してたのかもしれない。
そして今日、仕事でとあるイベント運営を任された時、今度は専門学校の彼女の前に付き合ってた、高校時代の彼女が観客として来ていた。
高校時代3年間と卒業後、計4年ほど付き合っていた彼女で、今の奥さんの次に一緒にいた時間が長かった人だ。
高校当時、コンビニでバイトしてた彼女は僕に首ったけで、本当に僕しか見えてなかった。
「今さあ、仕事が暇で売り物のエロ本を勉強のために読んでたんだけど、こんなこと恥ずかしくてできないよー!」
とか
「ねえねえ!今、◯組の◯◯君がコンドーム買ってったよ!お父さんのかな!!」
とか、事ある毎にメールをしてくる。一切僕は返信しないんだけど。
あとはハートでうめつくされたラブレターを3年間ほぼ毎週もらってたけど一回も返さなかった。たまに「殺す」だけとかもあったけど。
意味不明だけど、愛嬌があって、顔は別に可愛くもなく、ブサイクでもない本当に普通の子だったけど、僕はその独特の愛情表現に癒やされてた。
でも、僕は田舎住まいだった高校時代に嫌気がさして、東京の専門学校に出ることを決めた。
そしてその子とも別れた。当時、僕が東京で住んでいた駅でその、うしろ姿を見送ったのを最後に。
専門学校を卒業して、しばらくしてから地元に戻って、地元の企業に勤めて結婚した。
今はまだ、子供もいないけど、犬一匹と奥さんと一緒に幸せに暮らしてる。でも今日、その高校時代の彼女とイベント先でばったり会ってしまったのだ。
「久しぶりー。元気?なにしてんの?」ってとこから始まって、1〜2分立ち話をした。
あまりの驚きと忙しさも相まって、会話はほとんど頭に入ってこなくて、唯一、当時彼女と最後に別れたときの駅での後ろ姿を思い出してた。
いまの彼女はあの時とは違って幸せそうに、子供を連れて前を向いていた。
僕はきっと、しおれたバラを嗅いだような顔をしていたと思う。
そういえば今日はとても冷える、朝だった。
ぼくの今の奥さんは、躁うつ病なんだ。
僕自身、本当に折れそうで自殺したいという気持ちと葛藤してる、こんなときに。
いろいろ、思い出しちゃうじゃないか。なんでいまなんだ。
僕は気づいたんだ。当時僕が救ってたように思って、僕はずっと救われてた。
しおれちゃ、だめなんだよ。
僕はまた、救われた。
よくできた話なので、短編小説にして、どっかに投稿しろ