2013-06-28

羊水が何色かご存知か。私は知っている。さっき見た。

なんとまあ、鮮やかな黄色なのだ。はじめ、入れている容器にそういう色が付いているのかと勘違いしたほどの、見事な黄色である。へその下あたりに針を刺された穴のあいたまま、私はへええとひたすら感心しながら注射器から注がれるその色を見ていた。

そうだよねえ、おしっこだって黄色もの羊水がこんな色でなんの不思議のあるものか。でも、おしっこの色とも少し違う、ほんのちょっとだけ青か緑を加えたような、レモンの皮をもっと派手にしたような黄色なのだ。ああ、実に美しかった。

なんでまた羊水なんぞ見たかと言うと、注射器で刺されて抜かれたためで、なんのためにかと言うと、羊水検査なのである。その検査目的はと言うと、胎児染色体異常を調べることである

一人目は30で生んだ。その後が中々で、再度40でやっとこ妊娠した私に、夫は「生まれる前に検査してね」と言った。ダウン症の子供が生まれても、僕たち育てられないでしょう、と理由もちゃんと言った。けだし正論である

実を言うと、最初妊娠の時にも言われた。その時は、私はどうしてもどうしても検査したくなくて、医者にその気持ちを話したら、しなくていいんじゃない?と言われて、何もせずに帰った。帰宅して、検査はしない!と宣言し、数ヶ月後に生まれた子供ダウン症ではなかった。

でも、今度同じことを言われて、私はそうだね、と言って逆らわなかった。だって40歳なのだ。一人目の子供にも、できるだけ負担をかけたくない。

夫は、新しい検査法が導入されたニュースを見ながら、血液検査だけでいいって、楽でよかったね、と言った。私は、それはあくまで確度の高目なスクリーニングであって、確定させるためには羊水検査するしかないんだよ、と返した。夫はへえー、と少し残念そうにしていた。

自分のことだ、私の子供のことだ。私は少しは調べたりしたんだよ。あなたは、他人事と思ってやしないかい?と思った私は、あなた羊水検査ってどうやってやるか知ってる?お腹に針をブスッと刺すんだよ、と言った。怖がりの夫は、そういうこと言わないでよー、と怯えた。検査の影響で流産することもあるし、そこまでして検査しても、偽陽性だのわからなかったりということもあるし、わかることは限られているんだよ。障害はたくさんあって、ダウン症だけじゃないんだよ。この検査で何もなくても、生まれてから別の障害が見つかったら、あなたどうするの?もっと言うなら、上の子がこれから障害を負う可能性だってあるんだよ。ダウン症だけを恐れても、この先起こり得る悪いことを全部避けられるわけじゃないんだよ。

どう言うかな、と思ったら、それでも検査は受けてほしい。陽性なら生まないでほしい。陰性だったら生んで、他の障害があったら仕方ない、頑張るしかないよ、とボソボソと言った。

そんな訳で、今日仕事を休んで検査を受けた。手術室で医師を待つ間、担当看護師さんが、私39歳なんですー、まだ出産したことないけど、私ももし生むならこの検査受けますー、と言った。勇気いりますよね、勇気ありますよ、とも言った。

勇気かあ、勇気かなあ?生命の選別をすることは、勇気かなあ?陽性だったら、お前を殺す、という検査だよ。超音波胎児の居場所を探りながら、医師がその近くに針を刺して、羊水を吸い出す。いつ見ても手足を動かしている可愛い奴で、そのモヤモヤとした白黒の映像を見ながら、私の望む通りの染色体を持っていなかったら、お前は生きて私の胎内を出ることはないのだ、と考えていた。これは少なくとも勇気じゃない。ブスッと刺すんだよ、と聞いて嫌がっていた夫と同じ、怯えだ。どうか普通であってくれ、手間をかけさせないでくれ、という私の怯え。私の弱さが、結果次第ではあなたの命を奪うのだ。

針を刺される痛みは一瞬で、その後は不快な冷たさのようなものがしばらく続いた。そして、鮮やかな黄色羊水を見た。あそこに、胎児未来を決めるものが入っている。いや、違う。決めるのは私だ。看護師さんが、栓をしたシリンダーを胸ポケットにぽんぽんと二本入れた。検査なんかしなくていい、その黄色い水を持って帰る、と思ったけれど、言わなかった。

検査が終わった後は、しばらく安静にしていなければならない。手術室で20分、その後病室に移動して3時間検査当日と、その翌日は安静にする必要がある。なにせ、子宮に穴があいているもんで、立ってウロウロしていたら、羊水漏洩する恐れがあるためだ。

検査料金は12万円であった。美味しい昼食と帰りの車付きだが、どうにも高い。割引券があったらいいのに。

検査結果は数週間後に判明。どうなるんだろうな。どうするんだろうな。どうするべきなんだろうな。生みたいなあ。

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