ずっと小説を書く趣味があった。今でも書きたいとは思っている。
ところで、私は未婚の40歳の女である。当然、子供はない。どころか、生まれてこのかた自分が母になるという想像をしたこともない。性交渉したこともないし、この人と一緒にいると楽しいな、と思った相手はいたが、その人と子供を設けたいと思うこともなかった。
で、数年前まで働いていた職場では、未婚率が非常に高くて自分を異常だとは思わなかったのだが、数年前に転職して自分以外みんな既婚で子持ち、という環境になった。
最初は正直、全員に子供がいて、世間話をするなら天気より子供の話がテッパン。という世界に違和感を覚えていた。でも考えてみれば、先祖代々みんなが繁殖に協力して子供を設けたから私がいるわけで、子供を作ろうとする方が絶対的に「普通」なのだ。
後ろからスコーンと打たれて、コケたまま立ち上がれないような、それは大きなものの見方の変化だった。
というわけで冒頭に戻る。
ずっと小説を書く趣味があった。今でも書きたいとは思っている。でも、子供を作って人間種族の繁殖に自分も協力しよう、と思っている人は書けないのだ。何を考えてるんだか想像がつかない。え、自分と同じ遺伝子を持つ個体がもう一、二なんなら三、四体殖やしたいって、それどんな感情? 気持ち悪くないの?
というか、私は繁殖したくない人の気持ちでしか書けないんだけど、読み手に違和感持たせないように書けてるの、これ。今まで書いてきたのってみんなになんだこれ変なのって思われてたんじゃないの?
英語で書かれた本だって、1000年前の人が書いた本だって、男が書いた本だって女が書いた本だって子供が書いた本も老人が書いた本も全部、読み手にとってはふーんこの人はこんな風に書くのか、程度でしかないんだから繁殖する気がない人も好きに書けばいいし、ふーんって思って貰えばいいと思うのに、書くのにめちゃくちゃ躊躇ってしまうのは、子供はいるのが当然の世界っていうのが、自分にとっては本当に衝撃的だったんだろうなあ。
どんな話かくの