日本人は、かわいそうな立場の人たちが、ただかわいそうな立場でいるうちは同情もするが、
そのような人々がひとたび自分たちの人権について主張しだすと、「身の程知らず」「わがまま」などと非難しだす。
こうして,国家イデオロギーとしての「公共の福祉」は,市民を包摂する日本イデオロギーとなっていった。
その社会的背景には,「救癩思想」があると藤野教授は言う。それは,当初,国家側の救癩運動団体が流布したものであり,
「隔離された環境に不満をもたず,ましてや,隔離に対して人権侵害などと抗議せず,隔離を受け入れ,
国家の施策と国民の税金によって療養生活を送れることに感謝して日々を送ることを求める論理」である。
とはいえ,この「救癩思想」は,体制側の思想としてのみならず,広く社会全体の思想として浸透していた。
上に見たように,国会議員が,患者の代弁者たる間は患者のためとして活動していたにも関わらず,
ひとたび患者が自ら声を上げようならそれを拒絶する態度に如実に表れている。
さらに,「救癩思想」は,ハンセン病差別に特有のものではない。あらゆる差別に共通の「思想」である。
だってかわいくないんだもん