俺の母はスピリチュアル?にハマっている。
確かに昔からちょっと占いが好きみたいな予兆はあったけど、ある時からずっぽりそっちにいってしまった。
そもそも誰がどのような趣味を持とうが信仰を持とうが勝手である。それが例え家族だとしても。
だが俺は一つだけ言いたいことがある。
母よ、どうかスピリチュアルにハマるなら世界観を統一して頂けないだろうか。
熱心に、じいっと、頷きながら見ているそれを、俺は少しだけ遠目に見た。
『挨拶は人と人を魂で結び合わせる愛のメッセージ。挨拶で、相手を愛で包んであげましょう……。』
愛とか魂とか言うフレーズはなんか余計だが、「挨拶は大事です」まで削ぎ落せば何の違和感もなく同意できる内容だった。
俺は母に「ただいま」と声をかけた。
すると母は鬼の形相でこちらを振り返って、大声でこう怒鳴った。
「あんた、ママが今真剣にビデオを見ているのが分からないの!?それなのに話しかけるなんて!邪魔よ!早くあっちにいきなさい!」
えええええーーーーーーー!?
挨拶は魂を結び合わせる愛のメッセージじゃなかったのーーー!?!?!?!?!?
母は今朝もなんかノートパソコンを抱えてそれっぽい動画をみていた。
『人へは優しく声をかけ、愛で包んであげましょう。そうすれば魂は神と天使に祝福され、あなたに幸せを引き寄せることでしょう……。』
言ってること自体はそんなに悪くないんだけどなんかこう、やっぱり言い回しだけが胡散臭い道徳の動画だった。
母は俺を横目にじとっと睨んで、「邪魔だからあっちに行きなさい」「ママを一人にして」「集中しているから話しかけないで」と俺を退ける。
そしてその動画にうんうんと頷き、真剣にメモを取る作業に戻るのだ。
いやあの!!人へは優しく声をかけ愛で包むんじゃなかったの!?そのメモ意味ある!?
うちの母親もそんな感じ 考える力がないから情報を咀嚼しないで丸呑みしてるんだろう、ぜんぜん身になってない でも頑張ってる感は出してきてうざい
いやほんとまさにそう。 なんかいっそハマるならハマりきってくれた方がいろいろ楽な気がして……
人 (あなたを除く) とかだったら悲しい
対応はそれぞれだけど、俺は退去命令、兄弟は無視、父からは逃亡。 誰一人愛ある対応ではない……と思う。