2020-06-03

買いたいものもないのになんとなく最寄りのコンビニに入ってみたら、見たことのないカップ麺が山積みにされていた。

黒を基調としたパッケージ金文字が印象的で、なんとなく高級感がある。尾芽賀ラーメン…いわゆるご当地ラーメンだろうか?

値段は280円(税抜き)とそこそこで、興味が湧いたので買って帰ることにした。釣り銭の中にピカピカの10円玉があって少し嬉しくなる。

家に帰り、さっそく作ってみる。手順に変わった点はなく、ごく一般的カップ麺に見える。特徴を挙げるならばかやくに加えて炭酸パウダーなるものが入っていること、そして粉末スープから甘い匂いがすることだろうか。どこかで嗅いだことがある匂いなのだが、なんなのかは思い出せない。

湯を注ぎ、3分間待つ。温められたことで甘い匂いはいっそう強くなり、六畳間に満ち満ちる。あまりラーメンらしい香りではなく、むしろなにか、もっとさわやかな……コーラか!どうやらコーラ匂いに似ているようだ。

タイマーが鳴り、蓋を剥がす。水蒸気とともに顔面に押し寄せる芳香はまさしくコーラのそれだ。うまいのか?これ…不安になりつつ、炭酸パウダーを振りかける。なるほど、コーラである

麺はノンフライの太麺で、具はチャーシューナルトメンマ。このあたりに特徴はないように見えるから、やっぱりスープが決め手なのだろう。いただきます

…まずい!

まずいとしか形容できない味だった。甘ったるさをリング醤油の香ばしさとコーラスパイシーさがケンカをし、豚臭さが汚いヤジを飛ばす。控えめに言って大惨事だ。なんのまとまりもない。

これは捨てるしかいかな、と思ったが、せっかくだからもう一口くらいは食べておいてやろう。相変わらずだ。ひどいものだ。信じられない。

まり悲惨から可哀想になり、三口目を口に運ぶ。なんてことだ。神よ、僕を哀れみたまえ。

こうなったら四口目。あえて五口目。むしろ六口目?

…驚いたことに、気がつくとプラスチックの杯は空になっていた。空、だ。「汁完」である

自分が信じられなくて、呆然としたままフラフラと外に出た。

気がつくと、さっき立ち寄ったはずのコンビニの前にいる。吸い寄せられるように近づく。自動ドア大蛇の顎のようになめらかに開く。尾芽賀ラーメンが積まれている。だれかの手が伸びて、3つも同時に手に取った。その手は信じられないことに、僕の手らしい。

  • そりゃおめー「オメ臭らーめん」ってくらいだからマニア向けだろー

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