2020-05-28

やさしさはエゴだと気づいてしまった朝のこと

コロナ流行り始めた雨の朝のこと。

町中が妙にそわそわして、人同士の警戒心が目に見えるようになってきた時の話。

みんな大変なんだよ。

自分にできることなんてないから、せめてできるだけ誰にでもやさしくしようって心に決めていた。

そんなとき自転車前後に小さな子供を乗せて、必死に傘で子供が濡れないようにフラフラと走っているパパさんが横の道から飛び出してきた。

いつもならあぶないだろってイラッとするところだけど、きっと事情があるに違いない。

しかしたらいつもは奥様が送迎しているのに、コロナが影響して急遽パパさんが代わりに送り届けているから不慣れなのかもしれない。

みんな大変なんだ。快く道を譲ろう。

そう思って歩道の隅に避けた。

パパさんは気づきもせずフラフラ歩道の真ん中を走っていく。

別に見返りを求めていたわけではない。だって、みんな大変なんだ。

災害ときに人を優しくする。そういういいところだけ目を向けていれば、災害だってそんなに悪いものじゃないかもしれない。

そう思ってしばらく道を進むと先程のパパさんと子どもたちが自転車を降りて歩道に並んでいる。

何をしてるんだろう?

と思った直後、後ろから追い抜いていったのは、ここいらでは名のしれたバイリンガル幼稚園の送迎バス

笑顔バスに乗り込む子どもたち。

は?お前らセレブかよ

まじでクソッタレ

こっちは明日生活さえどうなるかわからんっていうのに優雅なご身分じゃないか

セレブ様が庶民歩道フラフラ走ってんじゃねえよ。

一瞬で腹の中がグツった。

共働き必死に稼いで、高倍率だけど融通の効く保育園かに焦って送り届けるところじゃなかったのかよ。

自分の中のやさしさがころっと手のひらを返して、自分でもおかしくなってしまった。

やさしさなんてエゴ。哀れみの視線と大差ないってことだよな。

みんなも自分は違うなんて勘違いしないように。

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