繁華街の雑居ビルにある鰻の寝床のような店舗でビストロが何年か前から営業していたのだが、先月末でとうとう閉店した。
食べログを見る限りでは、☆3.2に満たない程度で、価格帯の割にはボリュームのあるランチで付近のオフィス街からやってくるサラリーマン男性に主に人気があったようだ。付近をよく通りかかることがあったのだが、とうとう一度も利用することはなかった。フレンチを出すからビストロのはずなのに店内からはいつもワンパターンのボサノバが流れていたし、夜はサラリーマンの調子はずれの奇声が絶えず、客層があまり良いようには見えなかったので、静かに食事をしたい自分には合わないと感じていた。また、明らかに店主のものらしい折りたたみ自転車が毎晩歩道に止められてあり、そのモラルに首をかしげざるを得なかったというのもある。
新型コロナウイルスの影響で飲食店営業自粛が要請されるようになると、狭い店内は明らかに3密に該当する場所だったので、件のビストロはテイクアウトを始めた。店頭ではフランスパンを使ったサンドイッチの販売も行っていたが、突然閉店した。
近所に住んでいるせいでGoogle Mapの店舗検索でこのビストロのレビューを見かけたところ、☆1個になっていた。レビューコメントの内容は次のようなものだった。
「フレンチを出している店のはずなのにバゲットのことをバケットと連呼してサンドイッチを店頭で売っており、素人丸出しで恐ろしく、到底衛生管理などできていないに違いないので、絶対に避けるべき」
もともと客足が落ちていたせいもあったのだろうが、バゲットとバケットの言い間違いで店舗運営がとどめを刺されるということも実際にあるのだ。
シャッターが閉まったままの店舗にはもはや誰も来ないので、いつのまにか店舗前を利用してオメガラーメンのテイクアウト販売を昼時だけゲリラ的に行う業者が見られるようになった。非常時にはフレンチよりもこうしたある種奇妙な風味の食べ物を人は求めるのかもしれない。