2020-01-20

同窓会

同窓会、行ってくれば?」と妻が言った。

こんなことを言われるのは初めてだったので少し驚いた。我々夫婦はお互いにあまり干渉しない。妻はいつも「友達と会ってくる」「仕事の付き合いに行ってくる」「爬虫類カフェに行ってくる」などと言って勝手に出かけていく。大抵は日の落ちる前に帰ってくるし、夜遅くなるときには必ず連絡をくれる。私は私で、同じ様に妻に一言告げてから出かけるし、そもそもが出不精なので、自室でゲームをしたり、居間で本を読んだりしている。

奥さんと仲いいですよね、秘訣とかあるんですか?」とよく聞かれる。秘訣なんて考えたこともないけれど、「お互いを尊重することじゃないの」などと言っておけば、相手は「うちは束縛が厳しくて」なんて自分の話をし始める。

子供はいない。妻と過ごして10年が経つ。日々の暮らし

 

から妻に「行ってくれば?」なんて言われるのは初めてだ。同窓会の通知を何かの拍子に見たのだろう。秘密主義ではないので別に構わない。

「ああ」と返事をする。「でもさー、今更会って何話すんだろうな。懐かしいねーって言って、近況報告。で?って感じじゃない」

「いいじゃない、懐かしむのも。得るものはなくったっていい時間になるんじゃないかしら」

妻は普通に日常会話で語尾に「かしら」と付ける。

私は結局、同窓会に行くことにした。高校卒業から17年が経っている。

 

15人が集まった。これが多いのか少ないのかはわからない。クラスでも当たり障りのない人物だった私は、同窓会でも当たり障りなく振る舞った。お調子者の奴はお調子者であり、寡黙な奴は寡黙だった。何も変わらない。ずっと高校生でいれたらと当時思っていたことを思い出す。違いは酒があるかないかくらいのものだ。

近況報告などをするうち、14人が結婚していることがわかった。未婚であったのは、私が当時付き合っていた彼女だった。理恵。気まずさ故に同窓会では彼女と話すのを避けていたが、酔いが回るにつれ、彼女は隣りにいた。

「つーか、お前まじ結婚するんだもんなー」お調子者の一人が私に言った。「笑ったよなー、な?」

周りの人間は気まずそうにしている。笑った?俺の結婚を?それはなんだ。

「えっと、それはどういう?」

「だからさー、今日もそうなわけ。あの時も。お前の奥さん。やられたよなー」

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