高度に文明を発達させた人類は宇宙へとその勢力圏を伸ばしたものの、その拡大のペースは永遠には続かなかった。目新しい技術革新が起こらない冬の時代は数百年単位で続き、現状を維持するのも難しくなった。
コロニーの老朽化が進んでも、人類には新たなコロニーを作るだけの資源も体力も技術もなく、そして何よりニーズもなかったことで、コロニーの廃統合が進んだ。幸か不幸か人類の人口も漸減していたので、空きはいくらでもあった。やがて人類は、月と地球、そして月と地球を繋ぐ中継コロニーの3カ所だけに住むようになった。12億に満たない人類にとって宇宙は広過ぎた。
ある日、放棄されていたコロニーが月に落下した。甚大な被害を出したこの大惨事は、何百年も前から警告されていた起こるべくして起きた事故だった。地下に暮らす月だったからまだマシだったものの、これが地球で起きていたら人類の文明に再起不能なダメージを与えるレベルの大事故だった。
人類は慌てて放棄済みのコロニーを百年以上かけて除去したが、月と地球を結ぶ最後のコロニーが宿題として残った。このコロニーは黄金時代の頃から常に人類最大のコロニーであり、そして最古のコロニーでもあった。
九龍城のように増改築されたこのコロニーは今も現役だったが、いつ地球に落ちてきてもおかしくはない状態だった。100年以内に地球に落下する確率は15%以上ーこの数字を重くみた人類は、このコロニーも放棄することに決めた。これは同時に月も放棄することを意味していた。宇宙船の往復では月の居住環境を維持する事はできず、中継コロニーが不可欠だったからだ。
しかし昔からこのコロニーの住人は開拓者の祖先だとの自負が強く、10年の猶予期間が過ぎた後も3割以上が居残り「ここで生まれた我々は、ここを終のすみかにする」と主張した。痺れを切らした地球政府は、コロニーに対し実力行使に乗り出す。
なんですぐコロニー落ちてしまうん?
末期