都内で事件を目撃したために、第三者(マルモクと呼ばれていた)として事情聴取を受けた。時間にして四時間近くの拘束。被害者として取調を受けたときには七時間以上拘束されていたとはいえ、目撃者でも時間はかかるのだなと思った。
事件自体はそんなに大事ではないし、むしろ、目撃者として名乗りをあげたせいで地域課の人の仕事を増やしてしまって申し訳ないなと思うくらいである。
印象に残っているのが、警察署から最寄りの駅までパトカーで送ってもらっているときの警察官の話だ。
「綺麗事だとは思うんですけど、犯罪をなくしたいんですよね。でも、なかなかなくならないじゃないですか」と、言っていた。
任意とはいえ強制に近い職務質問のあり方だとか、そういうことで責める気持ちはあまりない。何より、警察官が一個人としてかもしれないが、「犯罪のない」社会を、一般人に対して「綺麗事」と言ってしまうこの世間の悲しさが印象に残った。綺麗事を、言ってくれよ。笑ったりしないから。公安の人はよく努力してくれている。疲弊する現場だとも思う。組織としてどうこうじゃない、警察官一個人が、犯罪のない社会を望んでいる、そんなにいいことってあるだろうか。彼らの仕事が減ることを、彼が望んでいる。
俺は、第三者の協力者として交通費以外の日当まで受け取ってしまって、申し訳なくさえ思う。仕事を増やしている人間に日当なんか出さなくてもいいのに。まして、歩いていけるような最寄り駅まで送ってくれなくてもいいのに。それでも、彼らなりに、協力者に対して最大限報いる方法が、日当を出すこと、駅まで送ることだったんだろう。無駄だ、と責める気にもなれない。
犯罪のない社会は望ましい。反面、刑法がある以上、それに抵触しない人間がいなくなるということはとても難しい。それでも、警察官にさえ「綺麗事かもしれない」といわせてしまう何かに対して、とても寂しい気持ちになったのだ。
警〇官「(マニュアルの棒読みなのにこいつ感激してやんのw)」