彼はチームリーダーではなかったが、チームで一番のパワーだった。
課金額もけっこうなもんだったと思う。
彼の望むチームのイメージと、現在のチームメンバー状況が合わないのはずっと前からだった。
強いチームを望み課金を重ねる彼と、チーム統合で後から入った微課金勢では、意識がずれていた。
重課金のメンバーもそこそこいるにはいたが、皆よい社会人だった。ゲームより仕事を優先したし、家族を優先した。
もちろん当の彼もそうだったのだとは思うが、他のメンバーに比べてかなりゲームを重視していた。
いつのまにかチーム内は無課金・微課金のプライベート優先というメンバーがかなり多くなっていた。戦力にならない。
それでもチャットが賑やかなのは、それはそれで彼も楽しかったんだと思う。
きっかけは半月ほど前、彼がパワーランクが最大ランクのうちの一人になったあたりからだと思う。
にもかかわらずチームイベントでは相変わらず他チームにぼろ負けだった。
次のイベントに向けて親交あるチームとの外交も必要なのに、チーム内の誰もそんなことは考えてないようで、日常の雑談でチャットルームが埋まっていくばかりだった。
で、突然彼はキレた。原因はリーダーが電話しても出なかったこと、にもかかわらずゲーム内チャットで彼にいつものように声をかけたこと が逆鱗に触れたらしい。
電話出ないくせに声をかけてんじゃねえ
という意味のことを地方の言葉で言い、チームメンバーが何事かと思っているうちにチームを脱退し 全ての連絡手段を絶ってしまった。
その後 彼は他国のチームを転々として、そのうちの一つに落ち着いたようだ。
彼はずっと日本人チームで政権を取りたいという思いがあったようだった。が、それより何より、勝てるチームにいたい 戦うメンバーと一緒に遊びたい という思いがあったんだろうなと思っている。