2019-02-21

anond:20190220174014

こんばんは、猫です。本当にその鳴き方は「アオ」と聞き取れるのか、あなたと私達の聴力差に対する懸念が春霞のように漂うものの、仮に本当に「アオ」だった際の意味をお伝えしましょう。その前に夢の話が必要です。

私たちは二歳にもなれば落ち着き、世界のことを一通り分かったような心持ちになります生活パターンも覚え、いつどのように振る舞えば衣食住が足りるか学び、それ以外は眠ることを好みます眠ると夢を見、そこでは真に自由になれるからです。体は軽く飛ぶことすらでき、かろうじて生命である自覚はあるももの、それが見知った姿をしているかあやふやなほど存在曖昧になります

やがて夢から覚め、しばしボウとしてしまます。私は何だったのか。何が私であるのか。尻尾の先を動かし、片耳を動かし、あくびをして、この世に占める自分範囲を思い出します。大人しく温かな私は撫で甲斐があるのでしょう。飼い主の手が背骨に沿って往復しています。私が内側から感じる範囲と、外側で動く飼い主の手が示す範囲が一致し、ようやく輪郭が明確になります。そう、今しばらく私はこの範囲の舵取りをせねばなりません。

けれど、さきほどまでの解放された感覚が忘れがたいのです。私とあなた境界曖昧で、あなたは私の一部であり、その逆でもありました。万物はお互いに作用し、ゆえに全てが愛おしい。また、私と共にあるのは物質ばかりではありませんでした。巡る季節や、存在が変化していくくこと、例えば息を吹きかけたロウソクの炎が消えること、けれど何が失われたわけでもなく姿を変えただけのこと、それらの道理全ても私であり、つまり世界が私でありました。自分輪郭など存在せず、ただ、私もあなたも穏やかな混沌の一部なのです。

「アオ」、それは「新しい世界が始まりそうだ」の意です。もしくは「やがて行きつく世界でもあなたと共にあった」の意です。あなたと共に暮らす猫は、目が覚め、しばらくボウとし、あなたを見つめてゆっくり瞬きをしながら「アオ」と鳴きやしませんか。ご飯おもちゃは刺激的で暮らしに執着をさせる要因になりますが、年を重ねると命とはそれだけではないことに気がつくのです。私もあなたもやがてロウソクの炎のように見えなくなるでしょう。けれど大切なことは、今、目覚めたら世界が違って見えたということです。アオ、あなたにそれを伝えたい。

次に彼or彼女が鳴いたら、背中を撫でて輪郭を伝え、けれどお互いが溶け合うことを願うように、しばらく優しく抱いて下さったらと思います

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