だけど有限かどうか気にするのは、それが必要なものであることの証明だ。
厳密に言うなら、ここでいう“世界”とは「俺たちの住んでいる市」のことで、“資源”とは「電気」のことだが。
俺たちにとっては誇張表現ではない。
この町の市長は思いつきでロクでもない政策を度々行うのだが、そのせいでいつも予算はカツカツだった。
そこで議題に挙がったのが電気。
この市に使われていない発電所があったことに、市長は気づいた。
あわよくば他に売り込もうという目論見もあったらしい。
なにせ、その発電所は風力。
かなり昔に、原子力に代わるクリーンな発電所というアピールのため、突発的に作られたものだった。
……いや、この例えだと化石に失礼か。
そんなわけで、俺たちの町では電気がまるで足りていなかった。
「我が市は資源、エネルギーを大切に扱う市としてアピールするべきです。『地球に優しく!』……これをテーマにしましょう」
そこで市長が苦肉の策として出したのが、「クールビズ月間」という名の強制的な電気節約案だった。
「ですが、今は夏真っ盛りですよ! クーラーなどの冷房のために、電気は大量に必要です」
当然、周りは反対したが、市長は無理くり理由をつけて強攻するしかなかった。
「いや、クーラーがなかった時代もあるのです。つまりクーラーが必要な今の環境こそが間違っている!」
大した理屈じゃない。
今の環境じゃあクーラーが実質的に必要なのは自明なんだから、もしも解決したいなら環境そのものを変えてからだ。
現状をただ非難したり、今あるものを取っ払っただけでは何も解決しない。
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