幼い時はなんとも思わなかったのに、中学にあがる頃、周りに比べて自分の手があまり綺麗でないことを自覚した。
「増田の手は小さいだけじゃなくて指もあんまり長くないし爪もなんだか四角いよね」
そう言った友だちの指はスラっと長く綺麗で、私はその指にあこがれていた。
初めて好きになった人はその店の社員で、10歳も年が離れていた。
私が困っているといつでも助けてくれる人だった。
一緒にレジ打ちやラッピングをしているとお互いの手が目に入る機会が多くなる。
自分の手に対するコンプレックスが一層増し、「もっと綺麗な手だったらよかったに」と思う度、友だちの綺麗な手がよぎる。
自分の手とは程遠い綺麗な手。
「私ももっと綺麗な手だったらよかったな」
ボソッとつぶやくと、「爪の切り方とか変えるだけでも指の形綺麗に見えるよ」と母親。
友だちの綺麗な指をイメージしながら、それに近づくように爪を切る。
爪の切り方を変えて2、3ヵ月経った頃くらいから自分の爪の形が好きになり始めた。
せっかくだからもっと綺麗になりたいといい匂いのするハンドクリームと淡いピンクのマニキュアを初めて買った。
半年経つころには、後輩や大学の同級生、ショップの店員さんに爪の形が綺麗だと褒められるようになっていた。
社会人になって5年。
最近、私を好きだと言ってくれる男性たちがよく私の指を見ていることに気づいた。
私の指を見た後、自分の指と見比べる男性はその後食事に誘ってくれたり、告白してきたりする確率がとても高い。