今年も冬が来た。
出掛けようとドアを開けると肌に触れる空気が変わったのを感じる。
ああ、そうか、季節がまた変わるんだ。
季節の変わり目は心がざわつく。
「会いたい」とストレートには言わない。
「そろそろ会うべきじゃない?」と書いてある。
会いに行きたいような気もしつつ、会うのが億劫であることも確かだ。
妻もいる、子どももいる。
家も車も買った。
平凡ながらもそれなりの生活を手に入れたと思う。
それでも、女からの申し出は抗いがたい力を持って季節と共にやってくる。
葉書を先に見つけたのは妻だ。
「行っておいでよ」と妻は言う。
「行ってきた方がいいよ」と、それが妻の望みでもあるかのようにもう一度念を押される。
「うん、そうだね」できる限り感情を乗せずに答える。
私は女に電話をかけ「行くよ」と伝えた。
「お待ちしています」女は答える。
付き合いが長くなっても女は敬語だ。
距離を詰めることはしない。
守るものが多くなった私への女なりの配慮なのかもしれないが、それが私の気持ちを余計にざわつかせる。
予定の時間に女のところに出向いた。
そして「どうぞ」と私を促した。
いつものように女は私を寝かせた。
女にはいつもなされるがままだ。
「ないよ」私は答える。
「分かりました」女は微笑む。
女は私に覆い被さり、それは始まる。
女は私の敏感な部分を器用に、丁寧に、まさぐり続ける。
ビクッ、と身体が反応する。
「…痛かったですか…?」心配そうに女は言う。
「いや…続けてくれ」私は答える。
「下の方も触っていきますね」女は言うと、私のさらに敏感な部分に手を伸ばしてくる。
思わず情けない声が出そうになる。
いい年をした男が、一回りも年下の女になすがままにされ、恥態を晒している。
まだ呼吸の整わない私に女は「お疲れさまでした」と声をかける。
「ああ…ありがとう」私は答える。
「また、来てくださいね」女は言う。
「来るよ」私は答える。
「虫歯もなくて良かったですけど定期的に検診に来るのは歯の健康のためにとても大事なのでまた3ヶ月くらいを目安にいらしてくださいね!歯ブラシ一本サービスしますけど青と赤どちらがいいですか?」
私は答える。
「赤で」。