手の平を表に見せて こんな感じで
空を仰ぎ見たり たまに手拍手
明るくいきましょ 盆踊り
弟たちの踊りは洗練されたものではなかった。
曲調もアレンジされているものの、要は盆踊りで流れているタイプのそれだ。
振り付けも目新しい要素はない。
だが弟たちのひたむきな感情を読み取るにはむしろ丁度良いものであった。
弟たちは笑顔を終始たやさず、有り体に言えば“楽しそう”だったのだ。
そして“楽しそう”は伝染しやすい。
観衆は弟たちの踊りを真似て、次々に踊りだしたのだ。
そのとき漂っていた独特な雰囲気は凄まじく、俺までつられそうになるほどだった。
何より弟たちは最後の組。
余韻が残ったまま結果発表となるわけだ。
俺とカン先輩のダンスが記憶に未だ残っている人は少なく、弟たちの優勝は日を見るより明らかであった。
夏祭りもいよいよ大詰め。
さっきまで踊っていたのに、よくあんな体力が残っているもんだ。
『積極的に騙されることで人は楽しもうとする』と。
そして“楽しんだもん勝ち”だと。
元から気乗りのしなかった俺が勝てないのは道理ってことなのかもしれない。
それにしても、ダンス大会で勝って上機嫌かと思いきや、どうも弟の太鼓が荒々しい気がする。
やはりダンスの疲れが残っているのだろうか。
「あの子、賞金をくじびきに全部つかっちゃったの」
紙袋の中身は見えないが……恐らく弟のハズレ景品ばかりが入っているのだろう。
「はあ~ん、くじびきの方が儲かりそうやな。次回はそれにしよ」
カン先輩から言わせれば、弟のあれも“楽しんだもん勝ち”ってことなのだろうな。
ただ、そのような“勝ち”で何かを得られる人間は、同じくらい何かを失いやすい性分なのかもしれない。
俺はそんな“楽しんだもん勝ち”から搾……勝てる人間になりたいと思うのであった。
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