2017-03-12

[] #18-3「俺の時給は980円」

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なぜだ。

俺の働きに何か不備があったのか。

これはさすがに少ない。

何かの間違いの可能性もあると思い、オーナーに尋ねた。


オーナー。俺の給料を時給で計算してみたんですが、それだと800円になるんです。何か間違えてないですか」

「いえ、間違えていないわ」

「じゃあ、俺の働きに不備があったんですか」

「いえ、普通くらいの働き」

「では、経営不振?」

「いいえ」

考えうる可能性は否定された。

だが、だとするならばますますからない。

何がどうなって俺の時給が800円なのだ

「じゃあ、なんで」

「同じくここで働いている子で、その子は前の給料が時給換算で1000円。今回の君と同じくらいの働きね」

いきなり別の従業員の話をしだしたオーナーに疑問を感じたが、ひとまず話を合わせる。

「多いですね」

「その子が今回、1.5倍ほどの働きなの。だから、その子の時給を1200円にしたの」

オーナーの言うことが、よく理解できなかった。

前回が時給1000円相当で、今回がその1.5倍の働きだというのなら、1500円だろう。

それに、一体そのことが俺の時給800円相当と何の関係が……。

そこまで考えたとき、やっと理解する。

だが理解してなお、俺はそれを咀嚼することができなかった。

「……俺の時給を800円分にして、その子を1200円にすることで、相対的に1.5倍の働きということにしたと?」

「そういうこと」

まりのことに目眩がした。

側面的には、俺の200円分をその子に回したということでもある。

働きに応じた報酬を、こんな風に帳尻を合わせてくるとは思いもよらなかったからだ。

俺の働きは何の問題もないのに、他の従業員の方が俺より働いているから減っただと?

そんな理不尽があってたまるか。


「そんな馬鹿な!」

評価というもの相対的ものよ」

「だからって俺のを減らさないでくださいよ。働きに支障がないなら、1000円にしてください」

「それじゃあ、1.5倍働いている子が報われないじゃない」

「その子を1500円にすればいいでしょう」

資源は有限。そんなに労働力お金を割くわけにはいかないの。1.5倍頑張ったからといって、店の利益が1.5倍になるわけではないもの。それでも相応の対価を支払おうとするなら、それは相対的ものにならざるを得ないわ」

大した理屈である

だが、こちらもそんなことでは納得しない。

このままでは俺の給料時給800円相当になってしまう。

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