とあるきっかけで久しぶりに古い仲間で集まった。好きだった人もそこに来ていた。
好きだった人が少し前に結婚していたことは知っていたけど、結婚してから会うのは初めてだった。
とても幸せそうだった。
周りから祝福されていて、新婚旅行には海外のテーマパークに行ったそうだ。
最近も二人で別の国に遊びに行ったと言っていた。
結婚相手は同じ会社の人で、仕事もできて部署を一人で支えているそうだ。
その人が結婚相手との話をするとき、謙遜するでもなく、嬉しそうにするでもなく、とても自然に「うち」という表現をした。
我が家、家庭、うちの家。
ああ、結婚したんだなと思った。もう私にはまったく手の届かないところへ行ったんだなと。
いまさら好きだった人とどうこうなろうなんて全く思っていなかったけれど、
なんだかほんとうにもう違うところに立っているのだと、私の人生とはもう二度と交わることはないのだと、
本当に馬鹿なことだと思うけど、ずっと見ないふりをしていたけれど、
やっぱり私は、その人のことをいまでも好きだった。
こうなることが薄々わかっていたから、今日は行きたくなかったんだ。
その人の顔を見たら、胸の奥が高鳴って、痛くなった。
なんにも忘れられていなかった。
憧れだった。
私には無いものを持っていて、強くて、一生懸命で、前を向いて生きている人だった。
昔、あの人に近づくために頑張ってみたこともあったけど、駄目だった。
私には、あの人の隣に立つ資格はなかった。
私は、あの人と一緒に歩ける人間ではなかった。
あの人にとって、私はただの昔の知り合いでしかないだろう。
久しぶりに会った知り合い。ただそれだけ。
あの人との直接のつながりはだいぶ前になくなっていたのだけれど、
知人をとおして時々近況は耳に入っていた。
あの人はちゃんと恋愛もして、仕事も頑張って、人間関係も築いて、自分の人生を自ら選択して生きていた。
そして愛する人と結婚して、幸せな生活を送っている。そのうちにきっと子供も生まれるのだろう。
私はあの人から離れたあと、何をしていただろうか。
私は恋愛もちゃんとしてこなかった、仕事も中途半端だった、人間関係もろくに築いて来なかった、何もせずにただ日々をやり過ごして来た。
あの人は人生のステージを着実に進めていた。そしてこれからも進み続け、幸せになっていくのだろう。
私の人生のステージは何も変わっていない。ただ歳を取っただけだ。私はなにもしてこなかった。
もうどうすれば良いのだろう。
心の中がぐちゃぐちゃだ。
あの人と私の人生を比べたって仕方がないことはわかっている。
でも、私の中にはどうしようもない劣等感と嫉妬と落胆と羨望がある。
なぜあの人の隣にいるのは私では無いのだろうか。
なぜ私はあの人のように生きられないのだろうか。
馬鹿な考えだと思う。
これはただ過去に執着しているだけなんだということもわかっているが、
私の心の奥深くに何年もこびりついて、いまだに取れていない。
もうわからない。
なにを頑張れば良いのか。
なにが幸せなのか。
何を求めて生きればよいのか。
もうほんとうにわからない。