相変わらず父は自分の仕事がいかにうまくいっているか、お金の心配をしなくていいかを語り(実際には事業の借金まみれなので現実から目をそらしたいのだと思う)、母は父の愚痴をこぼしつつ私がかすがいだと話していた。
私もいい年なので自分を理由に別れないと言われてもうれしくはなく、むしろ母は母の幸せを追求すればいいと思いつつ、まぁ実際に別れる気などないのも理解できるので、親孝行と思い相槌を打ちながら聞いた。愚痴がやんだころに母に産んでくれてありがとう、と伝えた。
母は流産を繰り返しており子どもはあきらめかけていたこと、妊娠を気づく前に転倒したけれど私が無事に産まれてきてくれてよかったと過度に感情的になりながら語り、産まれてきたときの感動をうったえた。「産まれてきてくれてありがとうー!」と思ったそうだ。
正直ちょっと過剰で、この人私を愛しているのか、娘を愛している自分に酔っているのかわかんないな、と苦笑した。母は前者だと思い込んでるけどね。
私は今妊娠していて、もうすぐ産まれるのだけど、なんだかまだ実感がわかない。初期は出血が多く切迫流産となったので、もし流産したときのために過度に期待しないように心がけていたからかもしれない。「流れてますね」と言われてもショックを受けないよう、常に気を張っていた。
妊娠がわかって夫が私に触れなくなったことも、結婚式の準備をしていたのに、妊娠がわかり延期になったこと(もしかしたら中止)も、「赤ちゃんがいなければ…」と思うきっかけになったかもしれない。
難関資格に受かったので、年齢的に転職するなら今かもと準備を始めていたのに、妊娠をきっかけにそんなのどこへやら、むしろ切迫流産で仕事を長期休むことになったのでキャリアプランがよくわからなくなってしまったのも、「赤ちゃんがいなければ…」と思うきっかけかもしれない。
それでも心拍を確認できたとき、手足が動いてるのを見たときには嬉しくて診察台で涙を浮かべた。胎動を感じたときにはふよふよと動くおなかに触れて笑ってしまった。
夫と大げんかして離婚と中絶を真剣に考えた後、やっぱり産みたいとも思った。たとえ夫と別れることになったとしても、産もうと思った。
私は自分が出産したときに「産まれてきてくれてありがとうー!」とは思えないだろうし、猿かエイリアンのような赤子の顔をかわいいとは思えない気がしている。産んだ後も泣き続ける子どもにイラつくかもしれない。
もしかしたら手を上げることもあるかもしれない。
それでも私なりの愛し方で、子どもを愛するのだと思う。それが子どもに伝わるのかはわからないけれど。
そのとき夫が隣にいて、支えてくれたらいいなと思いつつ、夫の好物をつくっている今の私は、不満を抱えながらも幸せなのかもしれない。
すげえどっかで見た感じがする釣りだな