2014-09-07

筋トレ麻薬

 

武井壮世間を賑わし始めた頃の俺はヒョロガリのもやしだった。

このままでは一生日の当たる事のない人生を送る事になると思い、

筋トレ世界に足を踏み入れた…

 

俺は日増しに進化を遂げる自らの圧倒的な肉体に酔いしれた。

破壊再生を反芻する超回復メカニズムはまさにその黄金比に達したかに見えた。

俺が真冬にもタンクトップ一枚で道行く人々の羨望を独占するようになったころ…

カオスの刻は突然やってきた。

 

最初悲鳴をあげたのは前髪だった。

瞬く間に旋毛、分け目へと飛び火し前線は為すすべもなく撤退した。

食事、運動、十分な休養…

計算完璧だった。

当時ウィダートレーニングバイブルに心酔していた俺は大学生理学でも優の評価を受けた。

ザバスから来た特別講師のお姉さんも俺の比類なき肉体と知識に唖然としたものだった。

歯車は確実に狂い始めていた。

それまでタンクトップの俺に注がれた人々の優しい微笑みはいしか侮蔑のそれへと変わっていた。

 

半年まりの月日が流れた。

一人、また一人、友人が離れていった。

つのサークルから追放された。

留学中の彼女には理由も告げずに別れた。

ようやく雑用係として小さなサークルに籍をおくことが決まった。

真冬でもタンクトップで平気な俺に真夏太陽容赦なく照りつけた。

少し広くなったオデコは静かにその光を讃えていた。

  • 幾つかツッコミたいんだけど 筋肉つけて、しかもカットも出るくらいまで追い込んでたんなら 冬なんて寒くて寒くてタンクトップなんてムリですよ。 当たり前ですよ、脂肪少ないんだ...

  • てか、筋トレのし過ぎで頭がハゲてきたなんていう面白キャラを自ら手放すような馬鹿なマネをサークルがするかよ。

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