某私立高校の「根性焼き」傷害事件についてのブコメで、意外なほど多くの的外れな批判が集まってたので、啓蒙ということで。
勘違い会場はこちら。http://b.hatena.ne.jp/entry/www.yomiuri.co.jp/national/news/20120808-OYT1T00336.htm
ここに少なからず見られる「同意があっても」云々は全て、無知に基づく誤った批判です。
(他)人の身体を傷害
(刑法204条)する行為には、被害者の同意がある場合には傷害罪(刑法204条)は成立しません。
被害者の同意は違法性阻却事由だからです。平易な言葉で言えば、やられた人が良いって言ってたんならやっても良いんです。
なぜか。
そして、各個人の身体は各個人のが自由に処すことができます。自由万歳。
したがって、同意に基づいて行われる障害行為には犯罪性がないのです。
このおかげで私達はハードSMを楽しむことができるわけですね。
被害者の同意が違法性を阻却する根拠は、保護法益を被害者が処分できることにあります。
だから、これが妥当するのは個人的法益を保護する犯罪類型に限られます。
社会的法益を保護する犯罪類型、例えば猥褻物陳列罪なんかだと、見せられた人が同意しててもアウトです。
また、個人的法益でも生命だけは特別扱いがなされていて、被害者の同意に基づいて殺した場合、同意殺人罪という犯罪が成立します(刑法200条後段)。逆に言えば、「同意傷害罪」が規定されていないことからも、法律が「被害者の同意」に基づく傷害行為を罰しない意思であることが判りますね。
もっとも、この「被害者の同意」は簡単に認めるわけにはいきません。同意を押し付けられるような弱い立場の者を保護しなければなりませんから。
そこで、「被害者の同意」は一般に、「真意に基づく」ことが必要だと解されています。
脅されて「同意」した場合には、同意は真意に基づかないため無効であり、違法性が阻却されず、したがって犯罪が成立します。
「根性焼き」なんてのは普通は好き好んで行うものではないから、関係者が「同意でした」と言ったくらいで真に受けるのは、故意にも等しい重大な不注意といえましょう。ましてあれほど多量の瘢痕を見て同意を信じるなど、弁解の余地は皆無です。
某私立高校を非難するべきはこの点です。「同意」を簡単に信じ、あるいは信じたふりをしたことが、問題です。
他方で、同意があっても云々の批判は誤りです。
ところで、もし実際に真意に基づく同意によって根性焼きが行われたとしたら、どうでしょうか。
この場合は「被害者」(もはや被害と呼ぶのも不適切だが)自身の非行であり、私立高校であれば退学処分もやむなしといえるように思います。
蓋し、自ら殊更に根性焼きの痕を作って見せる行為は己の暴力的性向を絶えず表明するもので、髪染めやピアスやファッションタトゥーを遥かに超え、ヤクザの刺青に近い悪性を有すると思われるからです。
法律のことは詳しくないけど、同意に基づく「根性焼き」の行為自体が公序良俗に反するということはないの?
まず前提として、「公序良俗に反する罪」という犯罪はありません。仮にそのような刑罰法規を作っても、憲法31条に反し違憲無効です。 他方、公序良俗に反することを根拠に被害者の...
一般にはやくざが小指詰めるのは同意があっても違法性阻却しないんじゃなかったっけ? 下級審判例があったような それと同じように考えても良い気がするけどな
仙台地裁石巻支部昭和62年2月18日判決ですね。 この裁判例は、先の最高裁判例が承諾の動機、目的、手段、方法、損傷の部位・程度などを考慮して承諾の有効性を判断するべきとしたこ...
丁寧にどうも。納得しました。
自殺ほう助罪とか、嘱託殺人罪とかあるじゃん。あれも合意の上で他人と一緒に自分を害する行為だったり、人を傷つけることをするという点では一緒のように思えるけど何か違うの?...
同意のある傷害行為は医療行為についてでしょ? 同意のない医療行為は傷害罪ですよね? こんな拡大解釈やってて頭大丈夫なんか?と思わずにいられない
同意で傷害や暴行をやっても違法性が阻却されるのに、なぜ殺人だけ違法性が阻却されないのぜ? 殺人だけ別格に扱う理由があるの? 教えて偉い人。