東京電力の総会が近い。
しゃんしゃん総会で終わろうとも、罵声と怒号が飛び交う長時間総会になろうとも、建設的な展開は期待できないというのが、下馬評である。
株主をまとめ上げて、東電の損害賠償は全額、既存株主に対する第三者割り当て増資で賄うという話にならない限り、東電の上場維持は不可能であり、100%減資で政府管理となるしかない。
株主をまとめ上げるには、メルトダウンが明らかになってから、総会に株主提案が可能である総会の8週間前である5月の3日までというのが、とりあえずの期間であったが、5月3日までに、既存株主側から、そういう話は一切出なかったというのが現実である。
株主の量が多すぎて、話の持っていきようが無かったという可能性はあるが、多いならばインターネットを使って世論を誘導するというやり方もあったのに、誰も、それをやらなかったのである。つまり、世論も株主も、東電を見捨てていると判断せざるを得ない。
メルトダウン前から投資していた人々は、値のあるうちに売り逃げしているという事であろう。だとすると、今回の総会には、事故前からの株主はほとんど出て来ず、事故後に株付けした連中が喰い付いてくるという観測になる。
メルトダウン後から、権利落ちまでの間に株を買った人だけが、参加する総会となるのであれば、罵声と怒号が飛び交う長時間総会になるであろうし、売り逃げるのが遅れていた人が多ければ、本当の株主はわずかしか出て来ず、与党総会屋によるシャンシャン総会になる。
いずれにしても、株主から資金を調達し、将来利益の中から株主に返還していくという、株主を使ったファイナンス以外に、民間企業のままの東京電力が頼れる財布は無い。
この日記に対し、後知恵等と批判があるようだが、たとえば、東京電力がこの日記をミラーして公式ミラー認定料を支払っていたといった外形があれば、利益共同体として民間企業としての存続に手を貸さなければならなかっただろうし、短期間とはいえ、東京電力に雇われていたとか、友人が居るといった、一宿一飯の義理・友情といったしがらみがあれば、多少の配慮はしなければならなかったであろう。しかし、そういった関係が無かった以上、協力しないのは当然となる。知恵を貸すのも只ではないし、世論誘導に手を貸すとなれば、相応の外形が整っていなければ、そのリスクを被るいわれはない。
人や組織を評価する時に、何をやったかや、どれだけ資金力があるかといった即物的な評価のほかに、どんな人や組織と利害共同体になっているか、どんな人に義理・人情といったしがらみを作っているかという評価基準がある。できる企業・人は、外に、しかも、技量・能力のある組織や人に、しがらみを広げているモノである。組織の内側にのみしがらみを広げていると、組織内での出世には有利かもしれないが、順調な時だけしか役に立たないし、組織から離れたら、途端に濡れ落ち葉となるしかなくなる。
東京電力がしがらみを広げていた株主も学者も官僚も政治家もマスコミも金融機関も、この非常時においては、揃って、役に立たなかったわけである。