大阪入管ずさん審査、中国人ら収入「生活保護」で入国
入国直後から生活保護を受給中の中国人ら29人が、来日後の収入見込みを「生活保護」などと自立生活を疑わせる内容が記載された申請書を大阪入国管理局に提出し、入国審査をパスしていたことがわかった。扶養者欄に生活保護の申請窓口となる「区役所」と記入された事例もあった。こうした申告で入国を認めた入管当局のずさんな審査実態が浮かび上がった。
入管難民法は「生活上、国または地方公共団体の負担となる恐れのある者は上陸を拒否する」と定め、生活保護に頼らざるを得ない外国人は本来、入国できない。上陸拒否条件に該当する疑いのある外国人の入国を許可した今回の入管の対応は、法の趣旨を大きく逸脱したことになる。
関係者によると、入管当局が、入国から3か月以内に大阪市に申請し、今年4月時点で保護費を受給中の61人について、入国審査時に提出された在留資格認定証明書の申請書などを再点検。その結果、入国後の自活が疑われる表記が29人分見つかったという。
8人が来日後の滞在費支払い方法を「生活保護」と明記していたほか、扶養者を「区役所」と記入するなど、入国前から保護費受給を当て込んでいたと予想できるものが確認された。
また、身元保証人の職業欄が空欄だったり、「就職活動中」「無職」「生活保護受給中」と記載されたりした事例も。身元保証人は、中国人らの来日後の扶養を約束する身元保証書を大阪入管に提出していたが、実際には扶養能力も扶養実態もなかったとみられる。
29人は、いずれも日本人の配偶者や日系人で、「定住者」などの在留資格を取得。日系人らへの審査では「日本人との親族関係が事実かどうかが最優先」(法務省幹部)とされ、来日後の生活基盤の調査が形式化していた可能性がある。
大阪市は、昨年6月に発覚した中国人46人(申請取り下げ)の大量申請問題を受け、同様のケースを過去5年にさかのぼって調査。判明した中国人ら61人について、資力や就職先、身元保証人の実態などを大阪入管に照会していた。
大阪入管は「個別案件については回答を差し控える」とコメントした。
元東京入管局長の坂中英徳・移民政策研究所長の話「明らかに上陸拒否条件に該当し、審査がずさんというほかない。身元保証人が滞在費の支払いを拒んでも罰則もなく、生活基盤が担保されていないのに形式的な審査で入国を許可してしまうのも問題だ」