2011-04-21

双葉郡に住んでいた友人から電話

いまどこにいるの?」

実家。』

「あ、そっか。○○市だもんね。でもそっちも放射線量多いんでしょ?大丈夫?」

『下手に他ん所行くと県の情報なんにも入らなくなっちゃうのよ。あたしパソコン使えないし

 行くなら臨時町役場がある加須市だけど、遠いし避難所生活になっちゃうでしょ?旦那とも離れたくないしさー。

 とりあえずここには親もいるし、外出には気を使うけど今のところは気兼ねなく生活できてるからね。』

「ほんと…大変だったね。

 大変て言っていいのか…、私、ごめん、正直いうと、なんて声かけていいか、迷ってる。

 ごめん。」

『いやいや。あたしだって他の人がこんな状況ならあんたみたいになるよ。もうすごいびっくりよ。

 まさか自分の家に帰れなくなる事態になるなんて、誰も思ってないもん。』

「うん。うまく言葉にできなくて、無事だって確認できたあとは電話もかけられなかった。」

あんたみたいになんにも言ってこない人のほうが気楽だよ。こういうとき

 なんか知らないけどさー。あんま仲良くない人からいっぱい連絡きたよ。こんなときに限って。

 チェーンメールとか一時期すごかったじゃん?あれとかなんか知らないけど、送ってくるのはずっと遠くに住んでる人達ばっかだったわ。

 「危ないから今すぐ避難して!!」とか。あれ送るのでなんかやった気になるんだろうね。こっちとしちゃ迷惑極まりなかったけど。

 逆に被災地に近い友達から全然こういうのなかったんだよね。今宮城に○子住んでるじゃん?』

「うん。あの子多賀城の近くだったよね。」

『そう。○子もなんかずっと停電してて大変だったみたいね。

 あたし地震から1週間後くらいにmixiに1回ログインしたんだよね。したらその日に○子から「無事ならよし」ってだけのメールが来てさー。』

「ふふ。」

『○子かっこよすぎでしょ。旦那がいなかったら結婚申し込んでたね。』

「○子も車流されてアパートも傾いちゃってダメだって言ってたよ。」

『そうだってね。んだから落ち着いた頃に○子に電話したのね。そしたらそんときに「一緒にがんばっぺ」って言われたんだよね。』

「うん。」

『あたしもそんとき「んだねー!一緒にがんばっぺねー!」っつってさ。』

「うん。」

『でもさ。』

「うん。」

『あたし、心の中で、うちとは違うじゃん。って思っちゃったんだよね。』

「……。」

『いっぱいガレキ撤去してくれる車が来て、行方不明の人も自分達で探せて、今まで住んでた場所に行けるなんて、うちとは違うじゃん。て。』

「……うん。」

テレビでさ、家なくした人がガレキの上歩いて、ここが自分の家でしたとか言ってるの見ても、だめなんだよ。羨ましいと、思っちゃうんだよね。

 その人も絶対に辛いはずなんだよ、羨ましがる環境では絶対ないはずなんだよ。

 でも、なんかだめなの。あたしだってあの場所に行きたいのにって。旦那のじいちゃんとばあちゃん探したいのにって。』

「……。」

実家なくなってないし、頼る人もいるからあたしは恵まれてるよ。こんなこと、心の中でだって絶対思っちゃいけない。』

「……うん、そうだね。」

子供がまだ小さいときさ、夜泣きひどいときによく散歩行ったんだよね。防波堤の上歩いて、波の音聞いてるとよく寝てくれるから

 冬の海はすっごい寒いんだけど、だんだん夜が明けきて、空が紫から黄色グラデーションして、お日様が出てくるとさ、すごいよね、めちゃめちゃあったかいの。

 耳がちぎれそうなほど寒かったのに、一瞬であっためてくれるの。

 あの瞬間が大好きだったな。』

「……うん、うん。」

『ごめんね、なんか。こんな話するつもりじゃなかったんだけど。』

「ん。いいよ。」

『またみんなで集まろうよ。ゴールデンウィークは色々忙しくて無理だろうけど、お盆とかさ。』

「あーいいねー、お盆。」

『あたしそっち行くし。』

「あ、でもお盆はこっち停電してるかもよ?」

『あ、そっか。……うん。んじゃこっちくる?まあ気にしなければ、だけど。』

「いいの?行っていいなら行くよー。」

『来てきてー。子供も会いたがるだろうし。』

「やったー。んじゃ、またお盆ね。」

『うん。聞いてくれてありがとね。』

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