2022-09-04

無職フライドポテトビール

この3つの言葉だけで今の俺の存在は表せる。情けないものだが、そんな俺でもフライドポテトビールを飲みながら、公園ハトを見ることぐらいは許される世の中で良かったものである

さて、日課のように貯金を食い潰してセブンフライドポテト銀色が多めのビールを買い、いつものベンチに腰掛ける俺であったが、なぜか今日大学生風の青年に話しかけられた。

「あの……」

「ん?」

お仕事は何をされてるんですか?」

いきなりその話題かよ。どんだけ俺は無職オーラが滲み出ているんだよ、と思ったがぐっと我慢して言葉を紡ぎ出した。

「……今は働いていないよ。今はね」

「え?今ってどういうことですか?」

ああもう!こっちも色々あるんだよ察してくれよ!と言いたくなる気持ちを抑えつつ、俺は答えた。

「今はニートなんだよね。あ、でも1年くらい前からからニート歴はまだ浅い方だよ」

自分で言っておいて何だが、こんなことを見知らぬ人に話すなんて恥ずかしいにも程があるな……と思っていると、相手から予想外の返事が返ってきた。

「へーそうなんですか!僕もニートです!」

なんだこいつは。今流行りの宗教関連のやつか?と思ったが、話を聞いているとそうではないようだった。

はいま19歳なのだが、高校中退してからはずっと家の目の前にあるこの公園に来ること以外は引きこもり生活を続けているらしい。普段は人と話すことなどないのだが、最近俺が来るようになってついに話しかけてきたと言うことらしい。

俺は彼に強く共感した。なんせ俺も高校中退してしばらく引きこもった後、20代になって高校卒業認定を受けて大学に進学した過去があるからだ。

説教くさいと思うかもしれないけど、まあおっさん戯言だと思って聞いてくれ。

俺も君と全く同じような過去をもっているんだよ。高校なんて1ヶ月も続かなかったし、ひきこもってペットボトルおしっこをしていたこともある。

そんな俺でも大学に行って、就職して、やっと人並みの人生を送れると思ったら、コロナ会社ごと潰れていまこの有様というわけだ。君はまだ若いんだからいくらでもやり直しがきくはずだ。こんな本当に終わってるおっさんことなんて放っておいて、君は君なりの人生を過ごしなさい」

ここまで一気に喋ると、少しスッキリしたが同時に虚しさに襲われた。なんせ、出てくる言葉が全て薄っぺらいのだ。

彼は過去の俺そのものだ。そんな彼が、今の俺を見てどう思うのだろう。

「僕も大学に行きたいと思って、最近勉強を始めたんです。でも、全くうまくいくなくて……。もう価値ないなとか、死のうかなとか、そんなことばかり考えるんです」

やっぱりこうなったか……。俺は彼を慰めるように言った。

「それは焦っているだけだよ。人生長いんだからさ。君のペースで頑張ればいいんじゃないかな。それに、まだ何も始まっていないじゃないか。これからだよ、未来は」

俺はそんな薄っぺらいことしか言えなかった。もし俺が哲学者だったなら、もっとタメになることを言えただろう。もし俺が詩人だったならば、もっと美しい言葉で彼を説得できただろう。だが、俺はただの無職だった。

ありがとうございます……。でも、もういいんです」

そういうと、青年はそっと公園から出ていった。

ぬるくなったビールを一気飲みして、俺も家に帰った。

もうあの公園には行っていない。

  • ぽてとふらいと公園で

  • どないしたらええねんな

  • そして1年後の公園。左手にファミチキもってくつろぐ増田。右手には大五郎をもっていた。

    • 俺は左にフェミキチもってる。

    • そして2年後の公園、立派なダンボールハウスだ。増田は一国一城の主人になってしまった。何も買う金がないので、今日も炊き出しに向かう。

      • ヽ(`▽´)/信長になってみたいけど信長になってみたいけどそんな器量はありません。鬼殺し。

  • そんなときに行っていい言葉はただ一つ「無職ギルドつくろうぜ。息抜きにやってるゲームある?」

  • 銀色が多めのビールってスーパードライだろ?全然無職感ねえわ イオン行ってバーリアル買ってこい

    • うむ 業務スーパーで買った冷凍ポテトをレンチンしたものと銀色が多めのローアルコールビール(Sky)で一杯やるのが相応だな

  • ごっそさん! なかなかの美味でした! 嘘松!

  • なんとなく雪 無音 窓辺にて を思い出したんこぶ

  • (^^)https://www.irasutoya.com/2016/05/blog-post_601.html?m=1

  • 嘘松of嘘松。こんなやつに喋りかけるやつ、絶対おらんやろ

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